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エリザの剣

エリザが副騎士団長とは。

男性とは体格も違うのに、それだけの地位にあるということは、相当の腕前なのだろう。


友達になる前にその事実を知っていたら、少し萎縮していたかもしれない。


「そんなに強いなんて、すごいわね。


…私、自分の身すら、今は自分で守れない。魔力量だけが多いことも、あまり人には言わない方がいいと言われたわ。悪用されるかもしれないって。


私も、せめて自分で自分を守れるくらい、強くなりたい」


エリザは、私をじっと見て口を開いた。


「私がこうなれたのは、魔術が使えないことの裏返しだと思う」


「…それは、どういう意味?」


「アリシアは、何で自分に魔術が使えないと思う?」


逆に、質問で返される。

私は首を振った。嫌になるほど考えたことだ。


「魔術試験の後、何度もそのことを考えた。でも、さっぱりわからなかったわ」


「…これは、私の予想なんだけど」


エリザは続ける。


「多分、私たちは魔力が大き過ぎて、魔術に身体が耐え切れないんだと思う。


これは、剣に魔力を乗せられるようになってからの感覚なんだけど。…魔力を帯びさせて使った剣は、あっという間にぼろぼろになるの。さっきみたいな稽古で使う剣は、すぐに使いものにならなくなる。


でも、言い方を変えれば、それだけ大きな魔力があるということ。使う方法が見つかれば、大きな力になる」


そういう視点で考えたことはなかった。

でも、私は剣を使ったことはないし、これから剣の練習をしても、きっとエリザのようには使いこなせない。


「エリザは、どうやって剣に魔力を乗せられるようになったの?」


「うーん。あんまり参考にならないかもしれないけど、一度、魔力を剣に乗せるイメージをして剣を振るったら、成功した。それで、練習するうちに上達した。


魔術は意志の力で使うでしょう?それを、何もないところに魔術を発生させるのではなくて、道具で発動させる、そんな感覚だね」


なかなか言葉で聞くだけではわからないけれど、大きなヒントはもらったと思う。


「ありがとう、エリザ。私も、これからいろいろ試してみるわ。


…さっき、剣がすぐにぼろぼろになるって言ったでしょう。例えば、魔物と戦う時には、何本か持って行くの?」


エリザは首を振る。


「実戦では、魔術がかけられた剣を使うの。魔具って、聞いたことある?」


「名前だけは。作り手が少なくて、ものすごく高価だとか…」


「このディーク王国には名工がいて、私の剣もその人が作ったものだよ。

…まあ、ちょっと偏屈なところのある人なんだけどね。

今度、その人の店に、一緒に行く?」


「ありがとう、うん、ぜひ行きたい!」


次の騎士団の休日に、エリザとその店に行く約束をした。

私にも、使えるものが見付かるだろうか。


「ねえ、ところで…」


エリザがずっと気になっていた様子で見たのは、私の膝の上にいたヴェントゥスだった。


「その仔犬、すっごく可愛いね…!」


ヴェントゥスは、警戒心が強いらしく、私以外の人に触られるのを嫌がる。

どうしてもヴェントゥスを撫でたそうに目を輝かせたエリザにぎくりとしたように、慌てて私の膝から滑り降りたのだった。

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