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友人

赤髪の騎士は、輝く剣を繰り出すと、瞬く間に稽古を付けられる騎士たちを組み伏せていく。

見るからに華奢な細腕でこれだけの力を出せるのは、やはり剣に魔力が込められているからなのだろう。


稽古を付け終えると、その騎士は剣を置いて汗を拭い、こちらに近づいてきた。


私を見て微笑むと、右手を差し出した。

「私はエリザ。リュカード様から、あなたのことは聞いてるよ。


…すごい。ほんとうに、魔力を人に分けられるんだね…!」


私も右手を差し出して握手すると、エリザ様は驚いて、目をキラキラさせている。


「私はアリシアです、エリザ様。お話できるのを楽しみにしていました」


「ああ、私のことはエリザって呼んで。堅苦しいのは好きじゃないから。あなたのことは、アリシアって呼んでもいいかな?」


「はい、もちろん!」


彼女の肩口までの短い髪は、鮮やかな赤で、小柄ながらも背筋がすっと美しく伸びている。意志の強そうな瞳はリュカード様の瞳の色を少し薄くしたような青色。整った顔は、女性ながら凛々しさ溢れる美しさだ。


リュカード様が私たちを見て、口を開く。


「エリザ、君も昔、魔術が使えず苦しんでいただろう。

君は特に剣に魔力を込めることで、その魔力を活かしている。アリシアにも、君の話を聞かせてくれないか」


エリザは頷き、私の目を見つめる。

「魔力だけあって魔術が使えない、その気持ち、私もしばらく持て余してた。

…私の話が、少しでもアリシアの役に立つといいんだけど。


立ち話も何だし、ちょっと場所を移そうか」


リュカード様たちも騎士団に用事があるようなので、私たちだけ先に失礼することにする。


***

騎士団の休憩所に移動し、空いている席に腰掛ける。


「アリシアの魔力って、すごいね!聞いてた以上で、驚いたよ。


さっきの稽古で結構消耗してたはずなのに、もうすっかり回復しちゃった。自分の魔力を分けてる感覚ってあるの?」


私は首を振る。

「私自身には、何にも感覚はなくて。ただ、触れているということしか感じないの。だから、エリザやリュカード様がそう言ってくれるのは、何だか不思議な気がする」


そして、聞きたかったことをそのまま口にした。


「ねえ…エリザ、魔術が使えないとわかった時、ショックじゃなかった?」


エリザは何かを思い出すような遠い目をした。


「うん、さすがに辛かった。うちの家系も、代々強い魔術師の家系だったから、何で私だけがって思ったよ。

…憐れまれるのも嫌だったし、魔術が使えないとわかる前から剣も練習していたから、そちらの道を進もうと切り替えた」


「エリザは強いね。…それを受け入れて、ほかの道を目指せるなんて」


エリザは首を振る。


「気持ちの整理を付けるまでは、かなり時間がかかったよ。

それに、ここでは、魔術が使えなくても、内心は家族にがっかりされたかもしれないけど、家族は家族だから。


…アストリア王国は、随分と厳しいんだね」


私に労るような視線を向けつつ、エリザは続けた。


「でも、こんな言い方をしていいかわからないけど、アリシアがディーク王国に来てくれて、結界が張れて、きっとそのお陰で助かった命もある。

…この国に来てくれて、ありがとう。


それに、同年代で話せる友達ができて嬉しいよ」


私は心から笑った。


「それは、私の方こそ!」


エリザはさばさばした性格で、明るくて、気負わずに話せる。こんな素敵な友人ができて、とても嬉しい。


エリザはふうと溜息をついた。

「だいたい、女性に話し掛けられるとさ。リュカード様や、ルーク様の質問ばっかりで、嫌になっちゃう。


リュカード様も、あれじゃ女嫌いにもなるよねー」


やっぱり、リュカード様はすごく女性に人気があるのね。

そうもやもやと思っていると、エリザが私を見てにっと笑った。


「リュカード様に聞いてたけど、アリシアって、ほんとに素直だね!


全部、顔に出てるよ」


「え、ええっ…」


思わずかあっと顔が熱くなる。


「知ってるだろうけど、リュカード様、いつもは女性に対して氷以外の何者でもないから、安心して?


ああ、あと、私は彼のいとこで、多分彼には女性認定されてないし、私の方もそういうんじゃないから」


「う、うん…」


…いろいろと顔に出ていたようで、恥ずかしい。

慌てて話題を変える。


「と、ところで。

エリザ、さっきほかの騎士に稽古を付けていたよね?

ということは、騎士団でも結構偉いんじゃ?」


「ああ、うん。副騎士団長だよ」


「副騎士団長…!」


彼女はさらりと言ったけれど、それはすごいことだった。

筆頭騎士、つまり騎士団長のルーク様に次いで、この国で2番目に強い騎士として認められている、ということなのだから。

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