リュカードの回想 3
翌朝、彼女にいくつか確認したい点があったので、朝食に誘った。
はじめは2人で朝食をとるつもりでいたが、ザイオンが、自分もいた方が情報を聞きやすいだろうと言う。
ザイオンには、回復薬ではなく、彼女からの魔力のお陰で命が助かったことを伝えていた。
「リュカード様は、何だかんだ言っても優しいからね。彼女に同情して、遠慮して必要なことが聞けなくても、困るでしょう?」
そうこうするうちに彼女がやって来て、ザイオンは慣れた口調で朝食に参加する了承を得ている。
しかも、俺と2人で、だんまりの朝食では困るだろうと。さすがにこれには苦笑した。
だが、アリシアの返事は予想外だった。
昨日の帰路、アリシアの状況を聞き、客人として迎える話をした後は、特に会話を交わすことなく黙っていたけれど。
…その沈黙も心地よく感じたと聞いたときには、驚いた。
俺もそのとき、同じことを考えていたからだ。
…そして、俺のことを助けておいて、俺に恩を着せるどころか、俺を優しいと思うなんて言ったのは、どんな買いかぶりだと思ったが。
その後、ザイオンが、聞きたかった本題にアリシアを誘導してくれた。
アストリア王国では、ディーク王国以上に、魔術の能力が重視されること。
魔術の才能で家格が決まるため、魔術の才能がないものには容赦がないこと。
家族の情より家としての格を重視するらしく、その感覚はディーク王国にはない、特有のものだろうと思う。
そして、特に聞きたいと思っていた、魔力はあるが、魔法は使えない者の、アストリア王国での取り扱い。
恐らく、アストリア王国でもほとんどそのような者はいないのだろうと思われる。
下手な質問をして真実を隠されても困るが、直接的に聞いた方がいいだろう、婉曲に聞いても趣旨が伝わらないだろう、そう考えた。
果たして、案の定だった。
直球の質問だったにもかかわらず、さっぱり意味がわからないという顔をされた。
…魔術が使えないのに魔力があっても、無用の長物だと。
そうアリシアが言ったのは、本心なのだろう。
…とすると、俺を自分の魔力で助けたことにすら、気づいていないのだろう。




