はすらもある次元
理氏はコーヒーを置くと最後の一本の煙草に再び手をかける。軽やかなBGM。少し暗めの照明。カフェで耳にする音楽や目にする明かりは、この店舗の多くの部分を定義している。
「理さん、質問をしていいですか。」
理氏には最近友人ができた。名はA氏とする。
「構わないよ。なんだい。」
BGMが変わる。しかしこの店にはなんの変化もない。先程の考えに従えば同じ曲と言っても差し支えないのでは、むしろ同じものが永遠と流れれば飽きという変容に襲われる。よって今の曲の方が先程の曲と比べて、より先程の曲らしいかもしれない。そんな下らないことを頭の端に置きながら質問を待つ。
「世界という観点において、時間と空間は区別できますか。」
「その質問をするということはわかっているのだろう。」
A氏はにこりと微笑んだ。理氏のこの先の言葉に耳を傾ける。
「時間と空間どころかそれらと煙草、BGMや照明すら区別がつかないよ。あくまでも僕にとってはだけどね。」
「そうなれば私にとってもそうなのでしょう。私には、この世界が存在できるための次元として理さんを外すことはできません。煙草は好きではありませんが。」
理氏は短くなった煙草を寂しげに見つめた。
「さあ世界のおしまいが見えてきたよ。これは回避され得ない。どうしようもないことなんだ。でも大丈夫。1日に何度も世界は終わる。そして新しい世界へと変わっていくんだよ。自分の存在、次元までもが異なる世界にね。」
理氏は煙草の火を消す。
暗転。
そして新たに明転。
お読みいただきありがとうございます。
より物語らしい形式にしました。内容はいつも通りですが。
情景描写は苦手なので、一回も使いませんでした。逃げるが勝ち。
是非感想をお願いします。