さはひとつの収束へと向かう
理氏はとても優しい行為をする。困っている人を見つけるとすぐに手を差し伸べる。
その姿を見たAが
「どうせ偽善だ。ただの優しい人なんているわけがない。」
と言った。
ここで理氏は不思議に思った。理氏は常に幾つもの思考が同時に動いている。これが当たり前だと思っていた。
人に優しくするときも同様。様々な思考が理氏の体を駆ける。その中には確かに偽善も含まれる。しかしそれと同様に本当の優しさもある。さっき食べたパンの味さえある。
では偽善とはなんだ。思考が一つしかない低俗な生物の間にあるものだろうと理氏は結論付けた。
純粋な思考など存在しない。一つのことだけを考えている人間など存在しない。
なぜなら人自体が幾つもの状態の線形和的にできているからだ。
優しい人など存在しない。幾つもの状態の中から優しさが観測された時にその人は「優しい人」というものに収束する。
しかし「優しい人」自体も幾つもの状態の線形和で表現されるだろう。
純粋な人間など存在しない。
理氏は手を貸した相手に金銭を要求しようと再度手を差し伸べた。
そこにさえ幾ばくかの優しさがあった。
読んでくださりありがとうございました。
この作品はTwitter(@logic_dept_)に掲載したものです。
分かる人はあの分野の話をしているのかと分かってしまうかもしれません。細かい知識はありませんのでお許しを。
キーワードに理系を入れているのは、わざわざ理系で検索をかけるような人間はこのような文章を好みのではないかという偏見に基づいています。
是非感想をお願いします。