あは始まり
世界はキラキラと輝いている。世界はとても美味しい。世界は目線を介して恋をする。大きな鯨が空を漕ぎ月光を噴く。宇宙の波が地球にも押し寄せ、満天の星が地上を占めていく。世界から世界が溢れている。
理氏には五感がひとつもない。完全な暗黒の世界。彼自身はそれを暗黒と表現することもできないだろう。透明な暗黒に彼は住んでいる。自分の存在を相対では表現できない。自らを鏡に写す。光のない世界で鏡を覗き、見えるのは絶対の自分。
この時、理氏にとって輝かしい世界は存在するのだろうか。
世界は観測によって定義される。空飛ぶ鯨も満天の大陸も物理法則を従えた現象に過ぎない。理氏が知らないところで世界は観測されている。なにも観測し得なくても、理氏は理性で以ってこの境地に至らねばならない。理氏は理性によって観測という概念を作り出す。ここまでくれば彼は透明な暗黒世界から、暗い天国へ行くことができるのだ。
世界は自分を中心に廻っている。世界は自分が観測している。子供の頃は皆そう考えるだろう。
しかしそれでは圧倒的に視点が足りない。主観の数を無限大に発散させればそれが観測となる。自らの認識の外に観測として論理的に示されるものは、自らの内包する他者にとっては認識される可能性がある。よってその存在をあなたは認めざるを得ない。
読んでくださりありがとうございました。
前回までの復習と考えるのがわかりやすい気がします。
なにも難しい話はしていません。肩の力を抜いてお読みください。雰囲気が楽しめれば理解さえ必要ありません。
是非感想をお願いします。短編集ですので部分ごとに感想を残してくださると助かります。
改訂済みです。