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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第四章 6番目の勇者
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嘘なんですけどね

「…………ん」


朝の日差しを受け、重たい瞼を開ける。


体の節々が痛い。あまり褒められた姿勢では寝ていないようだ。


ーーーというよりも、俺はテーブルに突っ伏して寝ていた。


昨日の夜、ソファーに戻らずに、そのまま寝てしまったのだろう。


「おはよう、さっちん」


声のした方を見る。するとそこにはルミナがいた。


「おう、おはよう」


テーブルの対面に座っていた彼女は、頬杖をつき、ニヤニヤとこちらを見ていた。


「子供みたいな顔して寝るんだね」


「アホ、俺はまだ子供だよ」


この世界での大人の基準は分からないが……日本では、20まではまだ子供だ。


「ルミナ、赤くなってんぞ」


そう言って、自分の額を指差す。


きっと自分もだろうが……ルミナの額には、押し付けていたであろう腕の跡が付いていた。


「え、ほんと?」


ルミナは反射的に自らの額を隠す。対して恥ずかしそうな様子は無い。


「あと、よだれの跡も」


テーブルから立ち上がり、洗面台へと向かいながらそう告げる。


「え!?ほんとっ!?」


ルミナの顔は見えなかったが、きっと恥ずかしがり、僅かに頬を染めている事だろう。


ーーーま、よだれの跡は嘘なんだけど。


✦✦✦✦✦✦


家の中に、ノックの音が広がった。


起きてきたシノ、アイルの二人を加え、四人で雑談をしていたときの事だ。


ノックの音を聞いた瞬間、ルミナはシノへのちょっかいを辞め、全身に緊張を走らせる。


………ルミナだけではない。俺を含めたこの場にいる全員もだ。


「アイるん、裏口の場所はわかるよね?」


ルミナの問いに、アイルは首肯する。


「何かあったらすぐに逃げてね」


そう言ってルミナは玄関へと向かった。


……ただの来客であってほしいと、そう思う。だが、希望的観測は出来ない。


『騎士がこの場所を突き止めたのではないか』……そういった不安が頭をかすめる。


「………」


チラリとアイルの横顔を見る。彼女は少しだけ気分が悪そうだった。


「アイル、大丈夫だ。騎士の追手が来たとは限らないし、もしそうだとしても昨日のことは関係ない」


俺達は昨日、アイルの両親に会いに行った。その時は何もなかったが、もしかすると………


『両親は騎士に監視されていて、昨日、私達も尾行されたのではないか』とアイルは考えているのかもしれない。


………たしかに、両親に会いに行ったのは浅はかだったのかも知れない。だけど、会いに行かねばならなかったのもまた事実だ。そうしなければ、ずっとアイルの胸に棘が刺さったままだったのだから。



「はーい、どちら様ですかー?」


扉の先にある廊下、さらにその奥の玄関から、ルミナの声が聞こえてる。


俺達に聞こえるように、わざと大きな声を出しているのだ。


そして…


『ガチャリ』


ルミナがドアを開ける音で、さらに緊張が走る。


来客は誰なのか、そして俺達は裏口から逃げる必要があるのか……


その答えを求め、俺達はルミナの次の言葉を待つ。異常をを感じたら、すぐにこの場から逃げ出せるように、自分の足に力を入れる。


「………?」


だが、ルミナの声は聞こえてこなかった。


そしてその代わりに……


()()()()()()()()()()()()()


そしてその足音は、まっすぐにこの部屋へと向かっている。


「………アイル」


呼びかけると、彼女は小さく頷き、全身に力を込める。


ルミナの声が聞こえない。………考えられる理由は2つ。


1つ、単純に話す必要がない。俺達にどんな来客が来たのか知らせる必要がない場合だ。


そして2つめ、()()()()()()()()()()()。この家にやって来たのが騎士団で、何らかの方法でルミナを脅している可能性だってある。


………どちらにしたって、とっとと裏口から逃げてしまうのが安全策だろう。


だが、出来ない。


もしも後者だった場合。………俺達がここにいると

騎士団にバレていて、すでにルミナが無力化されていると言うのなら、彼女を置いて逃げるなんて出来ない。


ーーーそしてついに、足音が止まる。扉の目の前までたどり着いたのだ。


外側から回されるドアノブが、えらくスローモーションに見え、一筋の汗が頬を伝う。


そして、これまたゆっくりと開かられた扉から現れたのは……


「やぁ、元気にしていたかい?」


………第四勇者(フィーア)だった。


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