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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第四章 6番目の勇者
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アイルニウム

アイルの衝撃発言のせいで、俺達の間に会話は無かった。


そうこうしている間に、ルミナ家の前に到着する。


三回ノックをして……


「ただいまー。………ただいマジックミラー号」


「………どうして言い直したんですか?」


「ほら、俺たちは国から追われてる身だろ?俺らしさをアピールしないと、ルミナとシノが警戒して、扉を開けてくれないかなって」


なるべく声を潜め、周りに誰もいないことを確認する。


「それもそうかもしれませんが………。まじっくみらーごうってなんですか?」


聞きなれない言葉にアイルは首を傾げた。


「マジックミラー号………それは、男の"理想郷"だよ。………大変お世話になりました」


「そ、そうなんですか。よくわかりませんが、お世話になったのならちゃんと感謝をしないと駄目ですよ?」


……なんだかとても申し訳ない気持ちになる。


そしてありがとう、マジックミラー号さん……。


そんなやり取りをしていると、目の前の扉が開かれる。


「おかえりー!……ふぅ、アイルニウム補給ぅ〜」


扉から出てくるなり、元気いっぱいルミナさんがアイルに飛びつく。


………アイルニウム。それは、アイルから微弱に発されていると言われる、この世全てのルミナに元気を与える成分なのだ。(適当)


「ただいまですルミナさん。………って、どこ触ってるんですか!」


「え、おっぱいだけど」


アイルに引き剥がされたルミナは、さも当然のように答える。一方のアイルは、大きなため息をついた。


「堂々と答えられても困ります……」


「照れるぜい」


全く反省していない様子のルミナに、アイルはもう一度ため息をついた。


「とりあえず中に入れてくれ……」


もはやお決まりになりつつあるやり取りに、少々呆れながら俺は呟いた。


✦✦✦✦✦✦


アイルとルミナは晩御飯の用意をするため、そのままキッチンへと向かい、俺は一人でリビングの扉を開ける。


中に入ると、ソファーにちょこんと座るシノの姿。


「ただいまー」


「ん、おかえり」


シノはこちらを見ずに返事をする。


そんな彼女の手元を見てみると……何やら絵本を読んでいるようだ。


「何読んでるんだ?」


問いかけると、シノは無言で絵本を閉じて、俺に突き出してくる。


「………被虐の巫女?」


受け取った本の表紙にはそう書いてあった。


子供が好きそうな可愛らしい絵本!………という感じはあまりしない。タイトルといい、表紙の色使いといい、暗い雰囲気が漂っている。


「これどうしたんだ?」


「サクラたちが出かけてる間、ボクとルミナも出かけたんだ。そこでルミナが買ってくれた」


「へー、シノたちも出かけたんだな」


「……『子供は家にばかりいちゃいけない』ってルミナが」 


拗ねたようなシノの表情。子供扱いされたのが気に食わなかったのだろうか。


「へー、ルミナがねぇ」


少しだけ意外だった。


ルミナが、家でシノと二人の状況を自分から手放すとは。


「ぐへへ、シーちゃぁん、逃げられないよぉ」とか言って、家に鍵をかけて襲いそうなものだが……


「で、シノはその本を欲しがったと」


『コクリ』とシノが頷く。


「なんか意外だな、絵本なんて読むんだ」


「普段から読んてるわけじゃない。だけどなんだか気になって………」


シノが気になった本……か。それは俺も興味を惹かれる。


「誰でも知ってる絵本らしいし、ルミナにお願いしたんだ」


誰でも知ってる絵本なのに、シノは知らなかったのか。なぜだか、更に興味が湧いてくる。

 

………そうだ、せっかくだし、シノに読んでもらおう。


「なぁ、シノ。ちょっと読み聞かせてくれよ」


「………自分で読めばいいじゃないか」


「まあ、そう言わずにさ、長い話じゃないんだろ?」


シノの隣に腰掛け、絵本を手渡す。


一応は受け取ってくれたが、読み聞かせについては、まだ納得していないようだ。


「ご飯までの暇つぶしって事で一つ」


「………何でそんなに読んでほしいんだ」


「シノの可愛い声が聞きたいからってのは?」


「うるさいバカ、女ったらし」


シノが絵本の角で俺の頭を叩く。普通に痛かったです。


………いやまて、ご褒美と言えなくもないのか?


「………仕方ない。『貸し』だからな」


シノは諦めたように本を開くと、ゆっくりと読み聞かせを始めた。

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