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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第四章 6番目の勇者
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君へのお願いは……

アイルと父親が再開を喜び合い、どれだけの時間がたった頃だろう。


父親の視線が、不意に俺へと向いた。


「君が第六勇者(ゼクス)であってるのかな?」


「そうです」 


目を逸らさずに答える。僅かな緊張感。


「いや………その()()()()()()か」


「…………っ!?」


父親の言葉に俺は驚愕した。だが、すぐに平静を装う。

 

アイルとその母親をチラリと見る。……大丈夫、二人とも気がついていない。


「あなたは……」


一度呼吸を整えてから、父親に問いかける。すると彼は……


「私の名前は"オスカー・コール"。この子の父親だよ」 


アイルの頭にぽんっと手を載せる。


「……食えない人ですね」


吐き捨てるように呟いた。俺が聞いたのは名前なんかじゃない、それはアイルの父親………オスカーさん本人だってわかっているはずだ。


アイルは気が付いていない様子だが……先程彼は、俺のことを『なりそこない』と呼んだ。それはつまり……()()()()()と言うことだ。


それにあの一瞬。俺をなりそこないと呼んだ一瞬………彼の体から、『殺気と呼べるまでに鋭い魔力』が出ていた。


本当に一瞬。そして僅かな量だったが、俺の感覚と魔顕(まけん)(ひとみ)はそれをしっかりと捉えていた。


『だめなおっさん』。その第一印象は、僅かな時間で塗り潰された。


「アイリス。彼と二人で話しがしたいんだけど……いいかな?」


「えぇ、私もアイルと話したいことがあるわ」


アイルの母親……アイリスの顔は、未だに険しいままだ。


「それじゃあ行こうか」


オスカーさんは、俺を一瞥したあと奥の部屋へと続く扉を見る。………俺に拒否権はない。


「………お父さんっ!」


そんな彼を、アイルは焦って静止した。


「大丈夫だよアイル。騎士に売ろうだなんて考えてないから」


「でも………」


俺は椅子から立ち上がり、不安そうなアイルの方を見る。


「気にすんなって、お前は家族水入らずを楽しんでろ」


「……わかりました」


「よし」


先に扉をくぐったオスカーさんの後を追う。


そして、短い廊下のあと、一つの部屋へとたどり着く。


ここは……書斎だろうか。本や書類が乱雑に積み上げられている。


それ以外はといえば、テーブルと椅子が一つずつあるくらいだろうか。


「そのへんに座っていいよ………って、場所がないか」


当たりをキョロキョロと見回していた俺に、オスカーさんは声を掛けた。


彼の言うとおり、座る場所なんて見つからない。立っているのがやっとと言うくらいに、この部屋は物が多く、整頓されていない。


「俺は立ったままでも構いません」


「………そうだね。時間は取らせないし、立ち話といこうか」


「……俺に話って、なんですか?」


恐る恐る尋ねる。先程向けられた"殺気"の感覚がまだ抜けきっていない。


「要件だけ話そう。無駄は嫌いなんだ」


『ゴクリ』と息を呑み、次の言葉に備える。油断はするな、アイルの父親とはいえ、まだ信用できない。


第六勇者(ゼクス)……君にお願いがあるんだ」


「お願い……ですか?」


………初対面である俺に、なんのお願いがあるというのだろうか。


考えられるのは……勇者として魔女を倒してほしいとか?


いやいや、先程オスカーさん自身が、俺のことを『なりそこない』と呼んだ。勇者としての俺にお願いなんてするわけがない。


それならば一体……

 

「と……その前に君の名前を教えてくれるかな?勇者ではない。"君"の名前を」


双葉(ふたば)(さくら)です」


「サクラくん……か。私から君へのお願いはたった一つだけだ。」


『すー』っと大きく息を吸い込むと……


彼はお願いの内容を語り始める。そしてそれは……


「この世界のどこかにいる"魔女"を探し出し、そして…………()()()()()()()()

 

「……………は?」


魔女を倒すために存在する勇者。その全てを否定するものだった。

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