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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第三章 スティグマ
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次の目的地。

「サクラ、これ」 


街に戻ると、桜色の髪をした少女……シノが何かを手渡してくる。


「これ………は」


それは………()()()()()


本来とは違う、ニーナの血によって赤い色をした花。


優しき少女が、優しき願いを込めた世界に一つだけの花だ。


「サクラが気絶したあと、失くしちゃいけないと思って取った」


そうだ。俺はこの花をポケットに入れたまま意識を失ったのだ。


それだというのに、花はキレイな状態を保っている。折れ曲がったりしていない。


……さすがは『枯れない花』と言ったところだろうか。


「……………」


シオンの花を胸に押し当てる。


そうするだけで……。ニーナの声が頭に響く。


『サクラおにーちゃん……。これ……カイトおにーちゃんに……渡しておいて……くれる?』


……そうだ。まだこの事件は終わっていない。


渡すんだ。この花を、ニーナのお兄ちゃんに。


伝えるんだ。彼女が最後まで『いい子』だった事を。


それが俺の。


彼女の最後を見届けた俺の仕事だ。


「シノ。それにアイル」


二人の名前を呼ぶ。大切な二人の名前を。


「俺はこれから王都に戻る。そしてこの花を、ニーナのお兄ちゃんに届ける」


「自分の立場がわかっているのかい?」


最初に口を出してきたのは……以外にも第四勇者(フィーア)だった。


「君は騎士団から………いや、この国から命を狙われているんだ。そんな中、王都に戻るのはまさしく……」


「『自殺行為だ』って言いたいんだろ?」


「………あぁ、そうさ」


王都にはここよりも騎士がいるはずだ。危険であることは間違いない。


「危険なことはわかってる。シノとアイルに無理に付いて来いだなんてこともいわない。………だけど、俺は行くよ」


この花をお兄ちゃんに。それがニーナの願いだから。


「……王都は騎士団の総本山だ。僕に出来ることは限界がある。それでも、いくのかい?」


第四勇者(フィーア)の鋭い視線が告げてくる。これが、最後の警告だと。


事実、王都には、4番隊……つまりは第四勇者(フィーア)の部下以外の騎士も沢山いるのだろう。そしてその騎士に見つかれば……


『確実な死』だ。


それに抗うすべはない。決定された事象。


………だけど。


それでも。 


「行くさ。行かなくちゃいけないって、思うんだ」


もう一度シオンの花を胸に押し当てる。


「そういうところだよ。僕が君を好きなのは」


第四勇者(フィーア)はパチンと指を鳴らし、そのまま俺を指した。


「サクラの好きにするといい。………君には君がいる。だから、()に従うんだ」


「ありがとな、第四勇者(フィーア)


俺と第四勇者(フィーア)は、我ながら奇妙な関係だと思う。


平凡な俺と非凡な第四勇者(フィーア)


正反対の二人。異世界でなければ出会うことさえ無かったであろう二人。


俺はこいつの本名さえ知らない。……だけど、友人。


「お礼を言われるような事はしていないよ」 


第四勇者(フィーア)はそう言って微笑んだ。


奥様方にモテそう。


「シノ、アイル」


彼との話が一段落した所で、もう一度二人に視線を戻す。


「殺されるつもりは無いけど、やっぱり危険だ。さっきも言ったとおり、無理に付き合わせるつもりは無い。二人はどうする?」


シノとアイルにとっては、この街に残っていた方が安全だろう。ニーナのお兄ちゃんに花を渡すだけなら、直接頼まれた俺だけでいい。


「約束」 


アイルが俺の瞳を真っ直ぐに捉え、小指を突き出してきた。


「ずっと一緒にいるって、約束しましたから」


そう言って微笑んだアイルの顔はとてもかわいらしく、思わず頬が紅潮してしまう。


「シノも、同じ気持ちですよね?」


アイルに問いかけられ、シノは『ふん……』と、小さく鼻を鳴らす。


「サクラだけじゃ心配だからな。………それにニーナは、ボクの友達だ」


聞くまでも……無かったのかもしれない。


そうだよ。俺達三人は『仲間』だ。


「……ああ、一緒に行こう。ニーナのお兄ちゃんに、ニーナの思いを届けるんだ」


シノとアイルが大きく頷く。


「話しは纏まったみたいだね」


第四勇者(フィーア)が『パンッ』と両手を合わせる。


「馬車は僕が用意しよう。出発は明日でいいのかい?」


「あぁ、助かるよ」


「それじゃあ、そこで僕は一旦お別れだね」


「だな。………その、色々助かったよ」


「ツンデレかな?」


第四勇者(フィーア)がニヤニヤとこちらを見る。


「うるせぇ、お前嫌い」


「ボクも嫌いだ」


前日に散々おちょくられたシノも俺に加勢する。


「僕を好きなのはアイルだけかな?」


俺とシノに嫌い発言をされた第四勇者(フィーア)は、最後の砦であるアイルに縋る。


だが彼女は、キョトンとしたまま、爆弾発言をかました。


「いいえ、私が好きなのはサクラくんですよ?」


「「…………」」


アイルの発言にしばしの間時間が凍りつき……


「「え!?」」


それから、俺とシノの声がハモった。


「わーお、大胆だね」


第四勇者(フィーア)は案外落ち着いていた。


「………?そうですか?」

  

アイルは相変わらずキョトンとしている。自分がどれほどの発言をしたか理解していないご様子。


「………仲間としてだよね?」


アイルに確認を取ってみる。


「男性としてです」

 

即答でした。え?ある?こんなロマンチックの欠片もない告白ある?


「アイルっ!!!」


シノが声を荒らげる。


………少し裏返っている、もしかしたら俺よりも動揺しているのかもしれない。


「こんなやつの……こんなやつのどこが良いんだ!?」


シノは頬を真っ赤にさせながら、俺の頬をグリグリと指で押す。


痛い、痛いですよシノさん

 

「どこと言われましても……」


アイルは困った表情を浮かべる。


「おいシノ、こんなやつとはなんだ!元の世界ではチョーモテモテだったし!」


「サクラ……嘘はいけないよ」


第四勇者(フィーア)は哀れみの視線を向けてくる。


「それにしても……アイルもサクラが好きだとはね。君とは良い酒が飲めそうだ」


「……お前未成年だろ」


第四勇者(フィーア)の正確な年齢はわからないが、おそらくは俺と近いはずだ。


「ここに日本の法律はないよ」


「調子の良い奴……」


ちなみに僕はいい子なのでお酒もタバコもしたことありません。


お酒とタバコは二十歳から。


「サクラくんの好きなところ………好きなところ……」


アイルさんはまだ悩んでおられます。あれ?もしかして無いんですかね?俺の好きなところ。


「いっぱいありすぎて………」


アイルは考えるのをやめた。


「アイルとサクラじゃ釣り合わない……」


シノはシノで、何かブツブツ言っていた。


「てか、シノ。なんでそんな顔赤いんだよ」


シノに問いかける。自分が好きだと言われたわけではないのに、その頬は真っ赤だった。


「あ、あかくにゃい……」


シノはさらに頬を赤くして答える。………いや、ちゃんと答えられていない。


「よし、食事でも取りながら、サクラの素敵な所でも語り合おうじゃないか。美味しいお店を紹介しよう」


「それはきっと素敵です」


歩き出した第四勇者(フィーア)に、アイルが付いていく。


「シノ、俺達も行くか」


「うん……」


シノは赤くなった頬を隠すように、俯いたまま答えた。


───悲しみは消えない。失くした心は埋まらない。


だけど『仲間』がいれば、きっと乗り越えられるんだ。


少しはさ、変われたのかな、俺。


なぁ、ニーナ………

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