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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第三章 スティグマ
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勇者とは

第四勇者(フィーア)side〜


「そろそろ出てきたらどうですか、かくれんぼという年でもないでしょう。ねぇ───栄光の王」


サクラたちが宿に戻ったあと、遠くの暗闇に向かって声を投げかける。


すると……予想通りの人物が出てくる。


「……魔力は完璧に消せていたと思ったのだがね」


武の極地、究極の一、人類最強、そして……栄光の王。


数々の呼び名を持つ人物………モハメド・ムンチャイだ。


「完璧に消せていましたよ。サクラ()でも気が付かないほどに」


「………なるほど。魔力ではなく、気配で気がついたと言うことか」


「そのとおりです」


サクラの感覚は相当に鋭いものだ。だが………それはあくまでも魔力への感覚。……それに頼っている以上、魔力を抑えている相手を探知するのは難しい。


「驚いたよ。こんなところに勇者がいるとは」


「それは僕も同じだ。貴方ほどのお人が……夜のお散歩と言うわけでは無いのでしょう?」


僕の質問に、栄光の王は小さく首肯する。


「サクラの様子を見に来た。彼が第三勇者(ドライ)に手傷を追わせたと聞いてね。………なるほど、この短い間によく成長している」


「彼にも才能があったと言うことです」


この口ぶり……栄光の王はサクラを知っていた……?


それにしても、何故この宿の場所まで知っている?


「わりと……平気そうな顔をされているんですね」


「どういう意味かね」


「貴方の統治するこの街で、あれだけの事件が起こったんだ。もっと悲しみに打ちひしがれ、泣いていると思っていました」


栄光の王に挑発的な視線を向け、肩をすくめてみせる。


「大人は知っているのだよ。泣いているだけでは、現状は変えられないと」


栄光の王は怒った様子を見せず、淡々と答えてみせる。


……すこし、揺さぶってみよう。


「僕が言うのもおかしな話ですが、さすがは勇者ですよね」


「…………」


「武の極地と呼ばれる貴方が治めるこの街で、二ヶ月も犯行に及んでみせたんだ」


栄光の王は………まだ反応を見せない。黙って話を聞いている。


「被害者の数は20を超え、その全てがこの街の住人。さらに連れ去った場所は………この街にある第三勇者(ドライ)の屋敷と来たものだ。───本当に良くやるよ、()()()()()()()()()


「………私が、犯人をわざと見逃したと?」


そこで初めて、栄光の王は口を開いた。


これだけ失礼なことを言っているのにもかかわらず、彼から不機嫌な様子は受け取れない。大人の余裕と言うやつだろう。


彼から敵意や殺意は感じられない。だが………油断はできない。全身に意識を集中させ、注意深く栄光の王を観察する。


彼ならば………敵意や殺意を抱いていない状態からでも、僕を殺すことができるかもしれない。


「どう受け取るかはご自由に」


「………若者は、少々夢を見すぎる」


「夢であって欲しいと願っていますよ。………魔女以外に、貴方の相手もするとなると、流石に骨が折れそうだ」


僕は自嘲気味に笑った。


本当に戦闘になった場合、骨が折れるで済めばいい方だということは、しっかりと理解している。


「君は魔女に……随分とご執心と聞く」


栄光の王は話題を変えてきた。自分と、この街の事件に関する話はここまでだという意思表示。


「えぇ、勇者ですから」


「……世界各地で起こっている魔物の凶暴化、気温の低下、世界が滅びへと向かう全てが……魔女の仕業だと言われている。存在も確かではない魔女のせいだとね」


栄光の王の瞳が……不意に鋭くなった。


「もし魔女が存在しなかったら、君はどうするのかね。向けるべき相手を無くした殺意は、人を狂気の海に沈める」


「一つ……勘違いをされているようなので訂正しておきます」


僕はピッと、人差し指を立てた。


「僕は魔女を殺したいんじゃあない。()()()()()()()()()()()()()


「知らない世界の、知らない民の願いを………か?」


「おかしいですか?」


「わからんな」


「日照りの続く国では雨を降らせた者が、戦争の終わらない国では戦争を止めた者が、民の願いを叶えた者が()()と呼ばれるんです。───だから僕は()()()()()()()()()()()()()()()()


そうだ、僕は魔女に私怨なんてない。いや、あるわけがない。


だってここは、僕の世界じゃないんだから。


だけど………殺す。それが勇者()の存在理由になるのだから。


「民の願いを叶え、魔女を殺し、平和な世界を成したその先は」


栄光の王は問うてくる。この僕を見極めようとでもしているのか。


「わかりませんよ、そんな先の未来は」


「『平和な世界に勇者など不要だ』──そう民が願ったとき、君はどうするのかね?」


……あぁ、その答えならば簡単だ。


右の親指を首にあて………


それをピッと、スライドさせる。


「………()()()()()()()()()()()()()()


「正しいな、危険な程に」


「お褒めの言葉と受け取って起きますよ」


僕と栄光の王との間に、酷く冷たい風が吹いた。


「そういえば、自己紹介もまただった。私の名はモハメド・ムンチャイ。──君の名は?」


彼が聞いているのは………勇者ではなく、僕自身の、本来の名前だ。


だが僕はそれを理解した上で………


「僕の名は第四勇者(フィーア)。───世界を救う勇者です」


………勇者として栄光の王の質問に答えた。


───だって、仕方ないだろう?


僕には僕が………()()()()()()()

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