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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第一章 小さな本物
2/229

リスタート

「貴方のことが好きです!返事はまた今度でいいので、また明日!!」


クラスの女の子、香菜ちゃんに告白された。


場所は高校の屋上、時間は放課後。あまり珍しくもない普通の光景だろう。告白されたのが俺─双葉桜でなければ。


香菜ちゃんは目立つタイプではないけれど、一部の男子には人気のあるとても可愛らしい女子だ。


そんな彼女が、勉強もスポーツも平均以下、ついでに顔面偏差も基準値の俺に告白してくれるとは。


まさに奇跡。棚からぼた餅どころではない。棚からフォアグラが出てきたような気分だ。


「あぁ、空はなぜこんなに青いんだろう。」


突然の告白に気をよくして自分でも気持ち悪い言葉を口走る。ちなみに今は夕暮れだ。全く青くありません。残念。


これで明日OKすれば、晴れて彼女いない歴=年齢の、現代日本が生み出した悲しきモンスターから抜け出せる。グッバイ非リア、ハローリア充。


17年間生きてきて、初めて向けられる好意に心が踊る。


──本当に初めてなんだ


ウキウキした心のままスキップで屋上から出る。もう誰も俺を止められはせんよ


「─あっ」

 

自分でも思う、間抜けな声がでた。


やらかした、階段を盛大に踏み外した。盛大に下まで転がり落ちて行く。


なぜか周りがスローに見える。これが走馬灯と言うものだろう。本当にあるんだなぁ。


俺の意識はそこで途絶えた。


✦✦✦✦✦✦


無償の愛などない。そんな事はみんな知っている。


好きな異性のタイプを聞かれたときに「自分を好きでいてくれる人かな」という返しはテンプレート。


好きな人には自分を好きでいて欲しいし、好きな人が自分以外を好きな時は心が痛む。


()()という感情は何かしらの対価を要求する。


異性との恋愛も、友達に対する友情の愛も例外ではないだろう。


だが、無償の愛に限りなく近いものがある。それは─家族愛。


親から子へ、子から親へ。その愛は限りなく無償に近く、自然に、ごく当たり前に、当然のように贈られる愛の形。


──そんな愛さえも受けることが出きなかった子供は、一体どのように成長するのだろうか


✦✦✦✦✦


「ここは…?」


目が覚めると、知らない天井。体は柔らかい感触に包まれている。どうやらベッドの上で寝ていたようだ。


「痛っ…」


体の節々が地味に痛い。あ、そうだ。俺階段から見事に転がり落ちたんだ。


女の子に告白されたのが嬉しすぎて階段から転倒…クラスのみんなに聞かれたはそれはそれはイジられまくるだろう。


「あー!やっと起きたぁ!」


凛とした声が響く。声のした方に顔を向けると、一人の女の子。年は自分と同じくらいだろうか。綺麗な金髪を、所謂ショートボブにしている。


首元には、紅い大きな宝石を使ってある、見るからに高そうなペンダントをぶら下げていた。


それよりも気になるのは身につけている服だ。あまり見かけないような…というよりも…よくファンタジーのゲームなんかで見かけるような服を着ている。


「召喚したと思ったらなぜか気絶してるし、怪我もしてるしで…ホントにあせっちゃったよぉ」


付けている高そうなペンダントや、服装に似合わず。喜怒哀楽の激しそうな女性だ…って、ん?召喚???


改めて部屋を見回して見ると、天蓋付きのベッドに、天井には大きなシャンデリアもある。日本でないことは確かで、自分がどれほど気を失っていたかわからないが、その時間で意識のない人間を海外まで運ぶのは無理があるだろう。となると……


「もしかしてここって、異世界?」


先程の召喚という言葉。目が冷めたら見慣れない服を着た女性。


これは、今流行りの異世界転移なのではなかろうか。


いや、間違いない。というかそうであってほしい。


「おぉ、話が早いね!君はこの世界を救う勇者として召喚されました!」


目の前の女性がパチパチと手を叩く。


きたァァァ!


心の中でガッツポーズをした。




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