表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第六章 食事会
173/229

たった一人の

「殺して欲しいと依頼された人物が、こんな可愛い顔をして眠るとは思っていなかったのかな?」


いつの間にか隣に立っていたルキウスさんが声をかけてくる。


「えぇ。誰かに死を願われる人物ですから、もっと醜悪な顔をしているとばかり……」


「そんなふうに考えられる君は優しいね。死神なんて物騒な呼び名、君には似合わないように思うよ」


「……ピッタリですよ。忌々しい加護(ちから)を持って産まれてきた私には。許されない罪を背負ってきた私には……ね」


自嘲気味に笑う。私は『死神』と呼ばれるに相応しい人間だ。


「忌々しい加護(ちから)に背負った罪……ね。君のように可憐な少女がそんな物を持っているとは到底思えないな」


「人は見かけによりませんよ。私には、この女の子が死神のお世話になる様な子には見えません」


健やかな寝息を立てる女の子を見る。バランスよく配置された顔のパーツ。艷やかな髪。眠っているので確認は出来ないが、その瞳も美しいのだろう。


「ルキウスさん。貴方は、私に『殺して欲しい人』がいると言いました。……それがこの子なんですか?」


隣に立つルキウスさんは、無言で頷いた。私は納得が出来ずに、さらに質問を重ねる。


「こんな可愛らしい女の子が、一体何をしたと言うんですか?貴方に殺したいと思わせるほどの何を……」


問いかけると、彼は自嘲気味に笑った。そして。


眠る女の子の頬を、優しく、愛おしそうに撫でた。


そんな。おかしい。だって。


人は、殺したいと思っている人物に、こんな顔を向けることは出来ない。出来るわけがない。


ルキウスさんの顔から、憎しみや憎悪を感じない。いや、それどころか『愛情』を感じてしまう。


何かがおかしい。何かが普通じゃない。


矛盾しているんだ。殺して欲しいという願いと、今彼が少女に向けている視線が。


ーーーあぁ、そうだ。ここに私の……『殺してあげたい人』がいる。……先程のルキウスさんの言葉を思い出す。


殺して()()()()人……か。


与えられたピースでは、パズルを完成させる事が出来ない。そこに何が描かれているかを知るには、さらなるピースが必要だ。


「この子はね、私の妹なんだ」


だが、ルキウスさんから渡されたピースは……。


「そしてこの妹は……。近い内にーーー()()()()()()()()()


更に私を、困惑させるだけであったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ