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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第六章 食事会
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変態さん。

「……何してるんだ?」


「わー、変態さんだー」


……なんとでも言うがいいさ。俺は心の中でそう呟いた。


ルミナとシノが侮蔑の視線を向ける相手……即ち俺は、それに相応しい様子だった。


正座をした状態で、両手を背中で縛られ、首からさげられたパネルには『私は変態です』と書かれている。


更には、頭に無数に出来たタンコブ。惨めったらありゃしない。


「ふふふ、俺はただ男の夢を守ろうとしただけだ。ーーーそうだ、間違っているのはこの世界のっ………」


「なーにカッコつけてんの、よっ!」


言いかけた俺の頭を、リープがグーで殴る。


「いてぇ!?同じところ何回も叩くなよ!?」


「ふんっ!それだけの事をしたんだからしょうが無いじゃない!……変態!バカ!ゴミ!クズ!!!」


リープは思いつく限りの罵声を浴びせる。事実はどうであれ、彼女から見た俺は単なる下着泥棒だ。


なので、素直に謝っておく。


「すみませんでした」


「今のアンタの姿をアイルにも見せたかったわ。きっと百年の恋も冷めてたわね」


「……そういえば、アイルは何処に行ったんだ?」


リープの言葉に一瞬『ドキリ』とし、話題をそらす。……が、きっとその必要は無かっただろう。


シノだって、アイルが俺に想いを寄せてくれている事は知っているのだ。別に隠す事では無い。


「アイルは朝から出かけた。親に会いに行くっていってたぞ」


「さっちんのこと心配しながら出かけて行ったよー?『熱は冷めてるでしょうか……』『本当はもっと一緒に……』ってつぶやいてた。ルミナさんは赤くなったアイるんのほっぺを見逃さ無かったZE!」


視線を向けたリープの代わりにシノとルミナが答えてくれる。


そうか。もうコソコソしながら両親に会う事はないのだ。堂々と、理由が無くても会いに行ける。……きっとそれが、家族の正しい形だ。


「ほら二人とも、そんなヤツと話してたら変態が移るわよ。買い物にでも行きましょ?」


リープの言葉に、ルミナが元気な返事を送る。


第六勇者(ゼクス)はもちろん留守番だから。私達が帰ってくるまでその姿勢のままよ?」


「……うぃ」


元気なく返事をした俺に顔を近付けたシノが、心配そうな声をかけてくる。


「大丈夫なのか……?辛かったらやめていいんだぞ?」


シノの背中に白い羽が見えた。………ような気がした。


スイートマイエンジェル『シノ』。なんと慈悲深い心だろうか。惚れてもうてまんねん。


「へーきへーき。きっとさっちんには『ゴホウビ』だから」


ニヤニヤと笑うルミナが、俺の天使を連れて行ってしまう。


……やがて、何かを思い出した様にルミナ一人だけが戻ってくる。


そして、俺に小さな声で耳打ちをした。


「それで、どうだった?」


「……?なにが……?」


言葉の意味がわからない。


「だーかーらー。プレゼント置いてたでしょ?風邪のさっちんが『ゲンキ』になる様に」


「……プレゼントって、何を置いたんだ?何を渡すことで俺を『ゲンキ』にしようとしたんだ?」


恐る恐る、問いかける。


「なにって……キマってるじゃん。それは……」


ビッと。俺に指を突きつける。


「リープちゃんのパンツだゾ!!!」


「お前がやったんかいぃぃぃぃ!!!」


空気を震わせんばかりに、俺は叫んでいた。


✦✦✦✦✦✦✦✦


リープ達が出かけてから、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。


足も痺れて来たし、お腹も空いてきた。


……だが、姿勢を変えるわけには行かない。なぜなら俺は人間だから。人間は理性ある生き物だから。だから言いつけを守るのだ。


願わくば、両親に会いに行ったというアイルよりも先に、リープ達が帰ってきますように。アイルにまでこんな姿は見せられない。きっと幻滅されてしまう。


ーーー面倒くさいのは嫌いだ。だから結論から言おう。結局その日、先に帰ってきたのはリープ達だった。


いや、『先に帰ってきた』と言うのは少々語弊がある。


その日、アイルは帰ってこなかった。次の日も、また次の日も。




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