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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第五章 モンスターパレード
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女は顔

「まさか、アンタと二人で行動する事になるとはね」


「はは、そうだな……」


地下牢へと続く階段を、リープと二人で歩く。降り始めてしばらくたつが、階段の先はまだ見えてこない。


光も届かぬ底の底。犯罪者を閉じ込めるには最適……か。


そこにはナナリーと、第三勇者(ドライ)がいる。もし顔を合わせてしまったとき、俺は平常心でいられるのだろうか?


「本当にこの先で何か起こってるの?だとしたら静かすぎないかしら」


「さぁな、俺もわからない」


静か過ぎる。確かに俺もそう感じていた。リアやイエスタ達……『アビゲイル』の新の目的地がこの先だと言うには、物音一つ聞こえやしない。


だが、地下牢(セメンテリオ)に向かおうとしたところをリアに邪魔されたのもまた事実。


モンスターパレードが勇者を……第五勇者(はなびらすずな)をおびき寄せる為の餌だったというならば、一番あやしいのはここだ。


……杞憂ならそれでいい。無駄足だったと後で笑おう。


「……城の中と外でさ、なんか雰囲気違うよな」


不安を紛らわせる為に、俺は話し始めた。


「外はあんな騒ぎなのにさ。城にいる……貴族?の人たちは優雅な立ち居振る舞いでさ。俺達が勝手に入ってきても何も言わないで。のほほーんっていうか、バカっぽいっていうか」


今は門番や、城内を見張る騎士は居ない。その全てが街に溢れた魔物の処理に追われている。


んな不用心な……と思わなくもないが、敵国やテロリストなどがいると言う話しも聞かないので、そんなものなのかもしれない。


許可も取らず城内に侵入した俺とリープに、貴族様たちは関心すらもたなかった。……俺の服が汚れているせいか、はたまたリープがメイド服を着ていたからか、汚物を見るような視線を注がれはしたが。


「下々の人間がどうなろうが構いやしないのよ。それこそ、死んだってどうでもいい。自分たちの生活が脅かされない限りは……ね」


「……そんなもんかね」


「そんなものよ」


リープは冷たく言い放った。そこには期待も失望もない。


人が『誰か』の死を悲しめない事は、痛みを感じることが出来ないのは、凄く……寂しいと思う。


「……井の中の蛙は幸せでした。外の世界で何が起ころうと関係なかったから」


「なによそれ」


「俺が好きなノベルゲーで言ってたやつ」


「『のべるげー』って、何よ。始めて聞いたわ」


「あぁ、なんか、まぁ……ざっくり言うと本だな。なんかそんな感じのやつ」


ニュアンスとしては間違って無いだろう。どちらも基本は『読む』事だ。


「なら最初から本って言いなさいよね」


棘のある物言い。始めて出会った時とは大違いだ。


あのときはニャンニャンいってて、それはもうヒロインの匂いがぷんぷんと……


「アンタってさ、バカよね」


「え、なんで急に罵られてんの?」


いくら棘があると言っても限度がある。そんなんじゃモテないぞ。


……女は顔っていうし大丈夫か。


「他人を助けるために命をかけたり。……殺されかけた相手と仲良くするなんてバカよ」


リープの声音から、その感情を読み取ることは…。


付き合いの短い俺では、不可能だった。



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