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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第五章 モンスターパレード
150/229

無力

〜アイルside〜


暗闇の先に、誰かがいる。……あれは、私の大切な人たちだ。


「………まって」


囁き、彼らの背中を追いかける。だけど、追いつけない。


「なんで……?どうして……?」


それどころか、だんだんと距離が離れていく。


ーーー駄目だ。駄目なんだ。あの時と同じだ。


私ではあの人達に追いつけない。私の必殺の加護(ちから)ではあの人たちと並べない。


……私では、誰も救うことが出来ない。輝かしい太陽になんてなれない。


✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦


「ここ………は?」


「ようやく目が覚めましたの?……ここは、騎士団の詰所、今は……避難所ですわね」


目が覚めると目の前にいた女性……メルクリアさんは辺りを見回した。


私も上体を起こし、彼女の真似をしようとするが……


「……痛っ……」


腹部に激しい痛みを覚え、それは叶わなかった。


その痛みにより、思い出す。私がなぜ気絶していたのか、私は誰と戦っていたのか。


……結局イエスタさんは、気を失っている私を殺さなかったのだろうか。


「安静にしていることをオススメしますわ。アイルさんまで治療の手が回っておりませんの」


首だけを動かして辺りを確認すると、私と同じように床に寝せられている人が大勢いた。


「全部、魔物に襲われた人たち……ですか?」


「……そう……ですわ」


メルクリアさんの顔が僅かに陰る。


……当然だ。こんな場所で笑顔を振りまける人なんているわけがない。


宿舎の中では今、ドタバタとした足跡や、苦痛なうめき声が絶えない。


……この場いるのは、軽い傷を負った者、腕の無い者………全身に毛布がかけられている者と、様々だ。


そんな彼らに治癒魔法をかけ、あるいはメモを取り……騎士団同士で怒号を掛け合っている。


「外はどうなってるんですか?」 

  

「……酷い有様ですわ」


「…………」


この国で一番人口の多い王都に魔物が放たれたのだ。その被害は計り知れない。


「ですが、収まりつつあるのもまた事実ですわ」


「すでに結界が?」


「えぇ、新しい術者がすでに結界を張りましたわ」


どうやら私は、それなりに長い時間、気を失ってしまっていたらしい。


結界が張り直されたと言うことは、入り込んだ魔物を掃討すれば事件解決だ。


「それにしても驚きましたわ、町中にあなたが倒れているんですもの」


メルクリアさんは肩をすくめてみせる。


「メルクリアさんが私をここまで運んでくれたんですか?」


「えぇ、そうですわ。……貴方程の実力がありながら負けるなんて……そんなに強い魔物がおりましたの?」


メルクリアさんの問いかけに、思わず黙ってしまった。


私を倒した相手の。イエスタさんの、悲しそうな顔を思い出してしまったから。


……私では、駄目なんだ。世界を救うどころか、大切な人の隣に並ぶどころか、誰かに手を伸ばす事さえ出来はしない。


間違いを教えてあげる事も、一緒に理不尽と戦ってあげることも。


「……私は、何と戦えばいいんでしょうか。何と戦えるんでしょうか」


口をついて出たのは、そんな弱音(ことば)だった。


「教えてください、メルクリアさん……。悪者は

、一体誰なんですか?」 


胸の痛みを噛み潰し、上体を起こす。


「人を呪ってしまった世界ですか?不幸を誰かに押し付けてしまう人ですか?それを受け入れ、諦め、仕返ししようとする誰かですか?それとも……」


もう一度、胸に鋭い痛みがはしる。物理的ではない、痛みが。


「それとも悪者は……。何もできくて、弱くて、世間知らずな私……なんでしょうか……」


サクラくんはお姉様を救ってくれた。だけど、私は……。


「メルクリアさん、私。この事件の首謀者に会いました」


告げると、メルクリアさんの両目が見開いた。

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