雄叫び
〜ルミナside〜
「おかしい……」
「何がだ?」
呟くと、隣に並んだシーちゃんが首を傾げる。
僕とシーちゃんは、外壁に開けられた『穴』を塞ぐ為に行動していた。
……恐らく『穴』を開けたのはリアだ。彼女の持つ怠惰の呪い。
「魔物や騎士が見当たらない……」
本来であれば、魔物の発生源に近付くにつれ、その数は増えるはずなのだ。……なのに、数は増えるどころか、今は一匹も見当たらない。
ーーー生きている、魔物は。
「シーちゃん、ちょ……」
隣にいる少女の名前を呼んだとき。
「ルォォォォォォォォッ!!!」
空気を引き裂くような、轟音が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
シーちゃんが、音のした方を見る。……その方角は、僕達の目的地と同じだ。
胸騒ぎがする。急がなくては。
「ごめん、ちょっと……急ぐよ」
「うわ……っと」
許可を取らず、シーちゃんを抱き抱える。驚いた声を漏らしはしたが、特に抵抗はしなかった。
風のように駆け抜け、目的の場所を目指す。魔物の侵入口となってしまっている『穴』へと。
……そして、たどり着く。そこで僕達を待ち受けていたのは。
ーーー全長2mを優に超える巨大な魔物だった。