表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第五章 モンスターパレード
138/229

勇者とベーゼ

〜サクラside〜


「ま、どーでも良いんだけど、さ。それじゃーーー『ゴリゴリ』に本気で」


前傾姿勢を取ったリアの瞳が輝く。


……その輝きを、俺は知っている。


見るものを焚き付ける蠱惑的な輝き。美しすぎるまでの赤。


その瞳は……あの子と……ニーナと同じ……


ーーー緋色の瞳だった。


「ベーゼ……?」


右手で胸を抑え、速くなった鼓動を沈めようとする。……が、それは何の意味もなさなかった。


リアの持つ緋色の瞳に視線が吸い込まれる。恐ろしいまでに、あの子と同じ輝きを放っていた。


激しく興奮した時、ベーゼとしての力を振るうとき、その瞳は(あか)く輝くという。


つまりリアは……『本気』だ。


当然の事だ。何せ、彼女が今対峙しているのはこの世界の勇者なのだから。


五番目の勇者ーーー花弁(はなびら)(すずな)


彼女の持つ『加護』も、戦闘能力も、俺は知らない。


だが、俺の『魔顕(まけん)(ひとみ)』は見逃さない。彼女の濃密な魔力を。


俺のように、膨大な魔力を持て余しているのとは訳が違う。扱える魔力の量が桁違いだ。


ーーーまごうこと無き『強者』。


彼女の放つプレッシャーは、第四勇者(フィーア)に迫るものがある。


なりそこないの俺にはない……()()()()()()()()


だからこそ俺は畏怖の念を抱いている。5番目の勇者である菘ーーーではなく。


その正面で、気だるげに前髪を弄っている少女……リア・シャムロックに。


信じられるか?そんな簡単に。


ありえるのか?そんな事が。


俺の持つ『魔顕の瞳』は、魔力を直接"視る"事ができる。


普通なら魔力は、『だいたい』、『なんとなく』と言ったように曖昧な定義で感じる事しか出来ない。


それを俺は視る事ができる。


『ハッキリ』と視る事ができる。


『正確』に視る事ができる。


………だから、ありえてしまった。


………だから、信じるしか無かった。


ほんの少し。ちょっとだけ。僅かに。………だが『確か』に。


リアの全身をかけ巡る魔力は、その量は。


()()()()()()()()()()()()


その事実を知ってか知らずか、菘はリアに問いかける。


「緋色の瞳……ベーゼッスか?」


「………………」


リアは答えない。もはや言葉は不要。


「関係なかったッスね」


そんなリアの意思を、菘も感じ取ったのだろう。


「リアさんが、自分達の邪魔をするなら。王都を魔物でいっぱいにした『わるいヒト』なら……」


『ヒト』という言葉に、リアの肩がピクリと動いだ。


「倒すだけッス」


ーーーずっと、ずっと気になっている事があった。


それは菘の装いだ。第四勇者(フィーア)のような騎士の制服を着ていない。短いスカートをヒラヒラさせている。


それどころか……『武器も持っていない』。


武器を持っていない……それはリアも同じだ。彼女たちの魔力から考えて、武器を持たずとも相当な実力なのだろう。


そんな思考を他所に、菘は動き始めた。


リアを見据えたまま、両手をゆっくりと背中に回す。


この場に漂う緊張感か、はたまた二人の圧倒的な存在感のせいか……その動作がえらくゆっくりに見えた。


両手が完全に背中に隠れたあと、今度は素早い動きでそれを前方に持ってくる。


『バッ』と突き出された菘の両手には。


ーーー白と黒。2つの銃が握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ