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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第五章 モンスターパレード
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私が知ってる女の子

〜アイルside〜


「ベー……ゼ?」


「そう、ベーゼ。アイルちゃんたち人間が忌み嫌う悪魔の子。どう?思ったよりハンサムだったでしょー?いやー、困っちゃうな」


ヘラヘラした表情。ふざけた口調とは裏腹に、イエスタさんから感じる魔力は……『絶大』の一言だった。


サクラくんのように魔力が視えるわけじゃない。


お姉様やリープの様に鋭い感覚を持っているわけじゃない。


……それでも、直ぐに分かった。この人は、私よりも強いと。


「……『人間が忌み嫌う悪魔の子』……ですか。嫌な言い方をしますね。ベーゼの方々だって人間のはずです」


「もー、アイルちゃんは可愛い顔して連れないこというねぇ……。でもよ?でもでも、ベーゼと人間が『違う生き物』って決めたのは、人間(そっち)っしょ?」


悪魔の子(ベーゼ)は忌むべき存在だと、悪魔の子(ベーゼ)は災厄を招く存在だと、いろんな大人に言い聞かされた。


ベーゼとしての生を受けるかは先天的なもの……病気と何ら変わらないというのに。


ベーゼの両親から、そうじゃない子供が生まれる事もあれば。


そうじゃない両親から、ベーゼが生まれる可能性だってあるし、姉妹の片方だけというパターンもある。


それなのに、それなのに。


愛しの我が子のはずであっても、ベーゼと分かった瞬間……ベーゼ専門の孤児院へと送られる。


それならばまだいい方だ。


虐待や、人身売買なんて、遠い国の話ではない。


血の繋がった子供だというのに。他の人とは違う魔法が使えるだけで。他の人より魔力が多いだけで。


他の人よりも……瞳が(あか)いだけで。


「ベーゼだって人間です。それをベーゼである貴方が否定するんですか?」 


私があったベーゼ(女の子)は普通の『人間』だった。


痛いのが嫌で、遊ぶことが好きで。


ただ…ありふれた幸せを望んでいた。


家族みんなで仲良く食卓を囲みたいと……そう願っていた。


「俺っちが認める認めないなんて関係ないんですよーっと。だって……()()()()()()()()()()魔物と人が、動物と人が違うのと同じようにー、ベーゼと人も違うわけなんですよー、これ」


それを認めてしまうのは……とても悲しい事だと感じた。


どちらも人なのに。誰かを愛することが出来ると言うのに。


だからこそーーー()()()()()()()()()


「だから……そうやってヘラヘラ笑っているんですか。……笑っていられるんですか」


相手との実力差を忘れて……固く、固く拳を握るほどに。


「そう決められてるからって全部諦めて、寄り添うこともしないで……っ!だからそうやってヘラヘラ笑えるんですか!?」


「……アイルちゃんに、俺っち達の何が分かるって言うのよ」


「なにもわかりませんよ。貴方が受けてきた苦しみも悲しみも……そして嬉しかった記憶も、それは貴方だけのものですから」


「なら……」


「ですがーーー理不尽には怒るのが『ヒト』です。ヘラヘラ笑って受け入れていいものじゃありません………!」


「それで、『ヒト』であるアイルちゃんは、一体どんな理不尽に怒っちゃってるの?」


「わかりませんか?王都に魔物を放ち、理不尽に誰かの命を奪ったことです」


許されることではない。どんな目的があろうと、人の命を奪うだなんて。


それはお姉様と、私自身が一番良く知っている。


「ベーゼと人間は違うと貴方が言うのなら。違うから、誰かの死を悲しめないと言うのなら……」


「言うのなら?俺っちをどうしようって?」


「ーーー私は貴方を倒します。サクラくんの元へ向かう為、邪魔する貴方を倒すのでは無く……()()()()()()()()()()()()()()()


左足を軽く引き、構える。倒すべき相手だけを見つめて。


わかっている。イエスタさんが私よりも強いって事くらい。


だけど負けられない。負けるわけにはいかない。


「貴方を倒して。そして……『ヒト』として、誰かに迷惑をかけたことを謝って貰いますから………っ!」

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