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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第五章 モンスターパレード
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向けられた刃 その1

人が空に憧れるのは、翼が無いからじゃない。


……きっと、その手が空には届かないからだ。


人は何処までも貪欲で、醜くて、自分勝手で、きっとその空でさえも欲してしまうのだろう。


誰のものでも無いその空を、手に入れようとするのだろう。


……今あるものを抱きしめる事も出来ずに、持ってないものを、他人のものを羨んでしまう。……人間なんてそんなもの。


だけどね、貴方は違ったの。


醜いものばかりの世界で、貴方はキラキラ、キラキラ輝いていた。……だからね。


ーーーだから私は貴方を……


✦✦✦✦✦✦✦


……。


…………。


体中を、黒い『何か』が駆けめぐっている。


ドロドロ、ドロドロ。……とても気持ちがわるい。


それはきっと憎しみ、それはきっと悲しみ。


………ただ純粋な"悪意"。


なぜだかわからない。何故そのような感情を向けられ無ければならないのか。何故殺意を向けられたのか。


『あは……アハハハハハハハハハハハハ!やったっ!ようやく殺した!これで『あの人』に褒めてもらえるッッッ!!!』


そのおぞましい笑顔が浮かんだ瞬間。


「ーーーッ!?」


俺の意識は完全に覚醒した。


「ここ…は?」


全身から嫌な汗が吹き出している。グチョグチョに背中が濡れていて、気持ち悪い。


……どうやら俺は、悪い夢でも見ていたようだ。


「……サクラくんっ!」


誰かの声が聞こえたので、そちらを見ると……


「やっと……やっと起きたんですね!」


両目の端に涙を浮かべたアイルの姿があった。


アイルは感極まった様子で俺に顔を埋めてくる。


「ちょ、どうしたんだよ急に」


「だって……だって……。もう2日も寝たままだったから……」


「……え?」


2日も寝たまま?


あたりを見回す。ここはルミナの家の、彼女の部屋のベッドの上だ。


なぜ俺はこんな所で寝ていた?それも2日間。


思考を巡らせ、記憶を辿る。


「……そうか」


そうして、思い出す。


俺の胸に深々と突き刺さされたナイフを。


向けられた醜い笑顔を。


「俺はナナリーに……刺されて……」


アイルは俯き、とても苦しそうに頷いた。



「アイル。なんでナナリーはあんなことを……」


言い終えたところで、『しまった』と思った。


アイルとナナリーは旧知の仲だ。そんな彼女に問いかけるのはあまりにも……


「わかりません。……なにも、わからないんです」


アイルは拳を握り、続ける。


「ナナリーがサクラくんを襲う理由なんてないはずなんです。……今思えば、あの時のナナリーはどこか変でした」


「変?」


「はい。どう言えばいいのか分かりませんが、いつもの彼女じゃなかったのは確かです」


「なぁアイル。詳しく聞かせてくれるか?俺が気を失ったその後を。……アイルには辛いと思うけど……」


それでも、知らねばならないだろう。


俺が命を狙われた理由を。俺がナナリーの魔力の中に"視た"違和感を。


「わかりました。お話しします」


アイルはゆっくりと、2日前について語りだした。


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