VSライオン
大通りは封鎖されており、その道の中央に、逃亡したライオンが徘徊している。
まず、マモルが先陣を切る。
ショットガンを構え、フォアエンドと呼ばれる銃身の下部についているレバーを手前に引いた。
「食らえっ!」
引き金を引くと、ドン、という音と共に弾が飛び出した。
しかし、弾はライオンからそれ、脇のビッ〇ロのディスプレイに命中。
辺りに破片が飛び散る。
「マネキンを狙ってどうすんのよ!」
「わ、わり」
もう一発、と弾をポケットから取り出そうとするも、銃声に反応したライオンが躍りかかる。
「わ、わ、わ!」
弾薬の箱をケツポケットに無理やりねじ込んだ為、取り出すのに手こずる。
もう駄目だ、とマモルが思った瞬間、さち子が叫んだ。
「猫じゃらしの構え!」
指先を高速で振り、ライオンの気を引く。
タライ壮曰く、出来るだけ早く振るのがコツ、だそうだ。
「……! グルアアアーっ!」
疑似猫じゃらしに気づいたライオンが、今度はさち子に躍りかかる。
(来たっ!)
刹那、さち子はタライ壮の動画を思い出した。
「猫じゃらしの構えでライオンの気を引けたら、後は簡単! ライオンは習性として、相手の首を狙ってきます。 なので、あえてこちらの首を差し出し、誘い込む。 そして、左腕を突き出し牙を受け止め、右の拳で神経のつまった鼻を、こうする!」
タライ壮が、右拳を繰り出す。
「皆さんも、ライオンと対峙した時は、試してみて下さい!」
動画はここで途切れた。
まさか、本当にライオンと対峙することになるとは。
「……って、出来るかあああっ!」
ライオンが飛びついてくるも、咄嗟にスライディングでかわす。
(……でも、左腕を使わないと、口の中に手を突っ込むことになるわ)
ライオンは反転して、態勢の整っていないさち子に覆い被さろうとしてくる。
「くっ……」
その時、誰かが叫んだ。
「これを使えーっ」
後方から、黒い鉄の塊が回転しながら飛んできた。
それをキャッチする。
(これは、無〇良品のフライパン!)
機動隊の中にいた、さち子のファンが、通りの店から拝借してきた物だった。
主婦にフライパン、まさに鬼に金棒である。
「グラアアアーッ」
「ゴラアアアーッ」
ガアン、と空中で牙とフライパンが衝突。
メキメキという音と共に、ライオンの牙を粉砕した。
「待ってーっ!」