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主婦の暇つぶし  作者: oga
6/17

ホテル

「はいはい、後々」


 さち子は、手でマモルを追い払う素振りを見せた。


「なっ、一大事なんだよ!」


 さち子は、はぁ、とため息をついた。

   

「……あのねぇ、あなたは私の中での優先順位は最下位なの。 忙しいから、またね~」


 立ち上がってカーテンを閉め、完全にシャットアウトすると、スマホを手に取る。

さち子は今日、SNSで知り合ったミノルと近所のホテルで会う約束をしていた。


(みんなやってるんだし、ちょっとくらいいいじゃない……)


 




 

 少し遅れるとメールを入れ、約束の10分後、駅前に到着。

すでに、ミノルが待っていた。

ちなみに、ミノルは大学生である。


「ゴメンー、ちょっと遅れた」


 急ぐ素振りで相手に近づく。


「全然! 今ついた所だから。 何か食べる?」


「うーん、じゃあ、コンビニで何か買ってこっか」


 SNSで他人と会うようになったのは、同じ既婚者の友達の勧めであった。

さち子は、体目的とはいえ、自分にここまで需要があるということに内心驚いた。

外見を褒めてくれる上に、エスコートまでしてくれる。

次第に、ちやほやされることに快感を覚えるようになった。


(旦那は絶対褒めてくれないし…… 恥ずかしいのか知らないけど)


 さち子は正直、旦那のことを男らしいと思った事が無かった。

高校の卒業式で告白され、場所は体育館の裏。

その時だけは、勇気があって格好いいな、と思った。


(でも、最初だけだったなぁ……)


 初めてのデートでは気合いを入れてきたものの、次第にだらしない所が目立つようになり、すぐにマンネリになった。

付き合って5年目。

お互い社会人になって、さち子は問い詰めた。


「プロポーズしてくれないなら、別れたい」


「ま、待てよさち子…… 今、考えてるから」


 それから1年後、煽られるようにして、旦那はプロポーズに踏み切った。







「ちょっとトイレ行ってくるね」


「……」


 ミノルは、体を小さく丸めて、眠っている。


(……もう、私のことに飽きてる)


 さち子はトイレに入ると、ミノルの番号を着信拒否にした。

これ以上、ミノルと会うことはないだろう。

結局、さち子を抱きたいから優しくしてくれるだけであり、その目的が達成されたら、扱いは一気にひどくなる。


(……分かってるわよ)


 さち子は、しゃくり上げる声を聞かれぬよう、トイレの水を流した。


(……なんだか、疲れちゃった)


 美味しい思いをすれば、後で辛い思いをする。

さち子はこの半年、ずっとそれを繰り返してきた。

トイレから出て、着替えを済ませると、そそくさとホテルを出た。

歩いていたら、少しずつ元気が戻ってきた。


「……帰ったら、あいつの相手でもしてやるか」


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