本命
通路は左右に別れ、挟み撃ちの危険がある。
警察官は即座に、向かって左側の照明を打ち抜いた。
「これで、良し」
左側の通路が闇に包まれたことで、相手は右側から攻め込んで来るだろう。
(相手が見えなきゃ、誰だって怖いからな)
右端に移動し、壁から通路を伺う。
(……いたっ)
相手は肩にサブマシンガンを担いでいる。
「銃を捨てろーーっ!」
一喝すると、相手は銃口をこちらに向けてきた。
「と、とにかく、ここから出るわよ!」
ショットガンを手に持ち、さち子とマモルは個室から出た。
左側は照明が砕けたせいで、暗くなっており、右側は警察官が銃で応戦している。
「……左よ!」
マモルと、辺りを警戒しつつ、慎重に歩を進める。
角を右に曲がり、直進。
すると、エレベーター付近に銃を構えた男が一人。
「……!」
その男がこちらに気づいた。
さち子は、咄嗟にショットガンを構え、叫んだ。
「心臓をまもれぇぇーーっ!」
ドオン、という銃声。
弾丸を食らった男は吹き飛ばされた。
「がはっ」
血を吹き、倒れる。
(……死んで、ないわよね?)
さち子の叫びが功を奏したのか、男は心臓を銃でガードしており、まだ息がある。
2人は、そのままエレベーターに乗り込んだ。
ひとまず難を逃れ、さち子は警察に通報を入れた。
警察官の安否が気になったが、爆弾事件はこれで解決するだろう、そう思っていた。
そんな中……
さち子が家でニュースを聞きながら昼食にありついていると、新宿で起こった爆弾事件のことが流れた。
「昨日、新宿で起こった漫画喫茶爆発未遂事件ですが、思わぬ展開を見せました」
画面の下に、テロップでこう書かれていた。
警察官、銃でユーチューバーを射殺、と。
「……えっ、この人」
写真には、昨日の警察官の顔が写し出されており、コメンテーターが事件について意見を述べていた。
「再生回数を稼ぐための過激な動画を上げるのが、ユーチューバーの目的でした。 それを間に受けてしまった警察官、難しい問題ですね」
さち子は、茶碗を持ったまま固まった。
「いやいやいや…… ユーチューバーだか何だか知らないけど、相手は銃を持ってたのよ……」
しかし、現状では警察官に非がある、といった報道のされ方であった。
「さち子ーっ」
振り向くと、いつの間にかマモルが庭に侵入してきていた。
「あんた、また人んちに勝手に……」
「またあのマンボウが動画を上げたんだ! しかも……」