漫画喫茶
マモルは、簡単に事情を説明した。
「……そのリモコンを押せば、爆弾が停止するんだな?」
「うん、だから急がなきゃ!」
警察官は交番から車のキーを持ち出し、パトカーに乗り込むと路肩に付けた。
2人を後ろに乗せると、サイレンを鳴らし、新宿へと急行する。
「……で、犯人は西口のどの漫画喫茶にいるんだ?」
「ちょっと待って……」
マモルが検索をかけると、西口だけでおよそ10店舗の漫画喫茶があることが分かった。
「嘘でしょ…… これじゃ、特定できないよ!」
その時、さち子が呟いた。
「……マンボウ、じゃない?」
「いたの、さち子」
「し、失礼ね! そんなことより、犯人は頭にマンボウのぬいぐるみをかぶってたわよね? 安直な考え方だけど、マンボウ、っていう漫画喫茶もあるのよ」
専業主婦で、暇な時間の多いさち子は、漫画喫茶に詳しかった。
「……本当だ! 新宿西口のマンボウ、ここだよ、きっと!」
「ナビをセットするから住所を教えてくれ。 あと、その店に連絡を入れて、お客を予め避難させておくんだ」
「了解!」
さち子とマモルは同時に返事をした。
現地に到着。
時刻は12:00で、爆発予告の15分前である。
先に車を店の前につけ、さち子とマモルが漫画喫茶のあるビルのエレベーターに入る。
警察官は、車をパーキングに止めてから合流予定だ。
「……何か、緊張してきたわね」
エレベーターは漫画喫茶のある6階へと上っていく。
チン、という音がすると、扉が開いた。
「……行くわよ」
一歩踏み出し、漫画喫茶内へと足を踏み入れる。
「……店の人も、避難したみたいだね」
連絡を入れたのがおよそ1時間前で、すでに避難は完了していた。
「さち子、僕は部屋の1番から探してくから、後ろの番号から逆追いしてきてよ」
「……分かったわ。 もし、5分前に爆弾が見つからなかったら、諦めてここから出ること。 いいわね?」
「……うん」
マモルに、軽口を叩く余裕はなく、素直にさち子の言葉にうなずいた。
(You〇ubeの映像には、黒いボストンバッグが映っていたわよね)
そのバッグに爆弾が入っているに違いなかった。