現地へ
「あんたね、お父さんと同じ目にあったらどうするの!」
マモルの父親は警察官で、とある事件に巻き込まれて亡くなっていた。
「何だよ、母親面しやがって! ……意地でも協力させてやるっ」
マモルは、おもむろに冷蔵庫に向かって駆け出した。
その動きに、即座に反応する。
(狙いは、冷蔵庫のプリン!)
さち子はスライディングをマモルに仕掛けるも、ジャンプで軽くかわされた。
「……!?」
「その動きは前に見た」
マモルは冷蔵庫からプリンを取り出し、フタに手をかけた。
「ま、待ちなさいっ」
「これを食べられたく無ければ、協力するんだ」
「……」
ところが、今度はマモルが裏をかかれた。
突然、踵を返したかと思うと、さち子はソファに横になってこう言った。
「好きにしたら」
「……えっ」
さち子は、やったらダメ、と言うより、やればいいじゃない、と言う方が抑止になることを熟知していた。
(子供の良心を逆手に取る方法。 さち子、あなた策士ね)
「……分かった」
マモルはフタを破り、逆さにして口に近づけた。
「いっただっき……」
「やめろおおおーーーっ!」
結局、プリンを食べられる直前で協力することを約束した。
「分かればいいんだ」
(悪魔の子め……)
「……とりあえず付き合うけど、間に合うの?」
駅の方面に向かいつつ、マモルに尋ねた。
「さっきスマホで調べたけど、電車じゃギリギリかもね」
「じゃあ、急がないと……」
さち子が駅の階段に差し掛かろうとした時、マモルがいないことに気づく。
「……あれっ?」
マモルは、駅の改札には向かわず、交番の中へと入っていた。
そこで、警察官にスマホの動画を見せて何やら交渉している。
「爆弾だって!?」
「うん、急がないと、間に合わないと思う」
(そうか、警察のパトカーなら、信号をかわして現場に直行できる!)
「となると、爆弾処理班を呼ばなきゃならないな」
「ま、待って!」
マモルは、将来警察官になるという夢を抱いており、今回の事件を解決して、面接に有利になるキャリアを積んでおこうと考えていた。
そのため、手柄を警察に渡すわけにはいかなかった。
「お巡りさん、もし自分で事件を解決できたら、早く出世できるかもよ?」
「……!」