Sルート
凶弾に倒れ、暗闇に落ちたさち子。
(てか、マモルのやつ…… 何考えてんのよ!)
ショットガンを自分に向けて、引き金を引いた時は、目を疑った。
(ほんっと、信じらんない!)
さち子が怒りながら暗闇を歩いていると、妙な光景を目にした。
中空にぶら下がる照明に、ちゃぶ台と畳。
そして、そこに座る一人の男。
(なんか、ボロアパートの一室みたいだけど……)
さち子が近づくと、胡座をかいていた男が振り向いた。
「……どうも」
「……マモルのお父さん!?」
マモルの父親が亡くなったのは2年前で、生前の姿をさち子は知っていた。
(ってことは、ここはあの世?)
へたり込むさち子。
しかし、マモルの父親は意外なことを口にした。
「さち子さん。 マモルは、これから悪の道に進もうとしています。 止められるのは、あなただけです。 私の残したアニメイトは、時間を15分巻き戻す能力があります。 使って下さい」
その時、さち子は思い出した。
マモルが形見として持ち歩いている、父親の腕時計。
(あれが、アニメイトだったんだ!)
時間が逆行し、呼び鈴を鳴らそうとする瞬間に戻ってきた。
(……!)
「どうしたの?」
呼び鈴を鳴らす手が止まり、マモルに問われる。
さち子は、マモルを一瞥した。
「……」
マモルはショットガンを肩に担いでいる。
(これから、この中で惨劇が起こる。 この子が、私たちに引き金を引いて……)
同じ誤ちを繰り返す訳にはいかない。
さち子は、マモルに語りかけた。
「……マモル、あなた、警察になりたいのよね?」
「そうだよ、今更何言ってんだよ」
「だったら、中にいる尾田先生を、あなたが説得するのよ。 少年漫画を書いてる先生は、あなたの言うことなら聞くかも知れない」
驚いた表情になるマモル。
さち子は、立て続けにこう命じた。
「先生は、連載のプレッシャーで心が壊れてしまった。 だから、そろそろ最終回を書いて欲しい、そう頼むのよ。 もしこれで、先生の気が変われば事件は解決する。 あなたはヒーローになれるわ」
「ほっ、本当?」
「ええ。 美味しいところは、全部あなたに譲ったげる」
黒幕は尾田A一郎の妻であったが、表向き、これで事件は解決したことになる。
後は、自分が説得して、自首させればいい、そうさち子は考えた。
呼び鈴を鳴らすと、最初の時と同様、尾田A一郎の妻が何食わぬ顔で現れた。
それを押しのけ、2階へと上がる。
指示した通り、マモルがA一郎に説得を試みた。
「先生、もう、ワンピークはオワコンです。 絵はゴチャゴチャしてるし、話も何だかややこしい。 一緒に連載してるブラッ〇クローバーの方が、ずっと分かり易いし少年受けしてます。 だから、もう連載終了して、青年誌に移りましょう!」
すると、A一郎は振り向いて笑った。
「君がそう言うのなら、本当なんだろうな。 ワンピークは、次で終わろう」
鈴子がその様子を動画に撮り、生放送としてアップした。
一方、さち子は、A一郎の妻と対峙していた。
「核ミサイルも不発、あなたにはもう手札がない。 自首しなさい」
「……時間がありすぎるのも、問題よね。 私の負けよ、自首するわ」
暇を持て余した主婦の起こした、今回の事件。
さち子は、他人事とは思えなかった。
(……私も、世の中や、現状に少なからず不満がある。 もし、目の前に自分の欲望を叶える「力」があったとしたら、どうなっていたか分からないわ)
そうならないよう、さち子は、ある思いを胸に秘めて東京へと戻った。
後日、マモルは事件をおさめた功績により、国から表彰されることになった。
鈴子は、女子高生と調教師の二足のわらじを履く生活に戻った。
そして、さち子は、自分の夢だった声優を目指すため、専門学校に通うこととなった。
おわり
終わりました!
今回は、エンディングを二個用意してみました。
感想、ダメ出しあれば、よろしくです!




