事件の果て
「尾田先生!」
しかし、呼びかけを無視し、一心不乱に漫画を書き続けている。
だんまりの相手に、さち子は痺れを切らした。
「聞いてるんですかっ」
肩を掴み、グイとこちらに引き寄せた、その時。
「うっ……」
思わず、さち子は腕を引っ込めた。
覗き込んだ顔は、目が血走り、原稿一点を凝視していたからだ。
「彼の心は、ここにはいない」
後ろから声がし、振り向くと、先程の女性がいた。
壁にもたれかかり、タバコを吹かしている。
「……どういうことですか?」
さち子が問い詰めるも、女性は虚空を見つめている。
そして、語り始めた。
「漫画家っていうのは、常にプレッシャーに晒される職業なの。 特に彼の場合は、一番面白い作品を書き続けなければならない」
トップに君臨し続けることを義務付けられたこの漫画家は、自分の限界以上の物を生み出し続ける内に、心が崩壊してしまったとのことだ。
「全部、あなた達のせい。 あなた達の面白い物を読みたいという欲求は、底なし。 だから、彼を救おうと思ったのよ」
「あなたが爆弾を?」
「……でも、しくじっちゃったみたいね」
女性は、吸い終えたタバコを壁に押しつけると、ふぅ、とため息をついた。
「見逃して、ね?」
「……ふざけないで下さい」
さち子は、フライパンの柄を握りしめた。
「主犯のあなたを、先に連行します」
「……簡単に捕まえられると思ったら、大間違い。 あなた達3人とも、沖縄の海に沈めてあげる」
女性はマモル、鈴子をスルーして、1階に向かおうとした。
「ま、待ちなさいっ」
その時だった。
ガアン、という耳障りな音がし、女性が階段から転がり落ちる音がした。
「……」
女性は背中に銃弾を浴び、ピクリとも動かない。
「キャアアアアアーッ」
鈴子が叫ぶ。
さち子も、何が起こったのか理解が追いつかず、いたずらに心臓の音だけが高鳴っていた。
「……マモル?」
「ごめん、さち子。 でも、これで手柄は僕の物だ」
ガシャン、とショットガンのレバーを引くと、続け様に鈴子に発砲。
血しぶきが壁に飛び散る。
「……あ、あなた、何考えてるの?」
「僕が警察になるには、僕の手で事件を解決しなきゃいけない。 そして、手柄は誰にも渡さない」
ガシャン、と再びレバーを引き、ためらいなくマモルは引き金を引いた。
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