核ミサイル
その時、マモルのスマホから、不快感のある電子音が鳴った。
「Jアラートだ!」
Jアラートとは、北朝鮮などの国がミサイルを日本に向けて発射した際、国民に避難を促すのを目的に流すアラームである。
「今カラ15分以内二、ミサイルガ飛ンデキマス。 速ヤカ二避難シテクダサイ」
「どうせまた上空を通過するだけでしょ。 心臓に悪いからやめ……」
さち子が言い切る前に、後ろから叫び声がした。
「まずいっ!」
叫んだ声の主は、機動隊の男だった。
「君たち、さっきの動画、私もチラ見させてもらったが、恐らく、敵は北の発射したミサイルに核弾頭を詰んでいる!」
「……えっ、じゃあ、迎撃ミサイルで撃ち落とすの?」
マモルが尋ねたが、機動隊の男は首を振った。
「確かに、海岸沖に迎撃ミサイルを設置してはいるが、命中精度はたかが知れてる。 撃ち落とすのは難しいだろう」
「そ、そんな……」
マモルの手からショットガンが抜け落ちた。
(……考えてみれば、日本で核なんて作れる訳ないわよね。 あの漫画家が、北朝鮮だかどこかの国に、資金と情報を流していたんだわ)
みな、一言も発する事が出来なかった。
しかし、機動隊の男が沈黙を破った。
携帯を取り出し、通話する。
「猫星か? 俺だ。 今から15分以内に核を詰んだミサイルが、恐らく東京に落ちてくる。 それより早く、ブルーインパルスで弾幕を張って、迎撃出来るか?」
「ブルーインパルス? 自衛隊か!」
うつ伏せで、泣きべそをかいていたマモルが、顔を上げた。
「警察は自衛隊と連携を取れるようになっている。 恐らく、ギリギリ日本の上空で撃ちおとせるだろう。 猫星の腕なら、な」
(ニャンコスターって言いたいだけでしょ!)
そんなことより、上空で核を撃ち落として平気なのか? とさち子が質問した。
「問題ない。 核は、均等に並べられたウランと呼ばれる物質に、うまく中性子を当てて臨界現象を起こして爆発させる。 これを横からの衝撃で乱してしまえば、爆弾は起動しない!」
(……専門用語は分からないけど、ビリヤードみたいなものかしら?)
「核は我々が何とかするから、君たちは犯人を追ってくれ!」




