マンボウの正体
光りは、どんどん小さくなり、鉄の塊と化した。
鈴子がそれを拾い上げる。
さち子が横から質問した。
「それって、シルバーの首飾り?」
「……これは、魂の作り物って言うの。 自分の魂を使って作った、アイテム」
ネックレスは、シルバーで形作られたライオンの顔に、首から下げるための鎖が通されていた。
「……大事にするよ」
鈴子はそのネックレスを強く握り、涙を流した。
(……とりあえず、けが人も無かったし、一件落着かしら?)
さち子がホッと胸をなで下ろした矢先だった。
ピコン、という音がマモルのスマホから鳴った。
「マンボウだ!」
マンボウの動画が更新された合図であった。
すぐさま、それを再生する。
「……狩猟祭は楽しめたかな?」
場所はどこかの個室。
相変わらず、顔はマスクで隠れて判別しにくい。
「突然だけど、そろそろ遊びは終わりにしようかと思うんだ。 ちょっとした爆弾とかじゃ、部屋に隠れている奴らにまで危害は及ばない。 だから、僕の全財産を投資して作った核爆発を起動させることにしたよ」
さち子、マモル、鈴子の3人が一斉に反応する。
「核、爆弾……!?」
「これを起動させたら、日本は壊滅する。 僕は安全な所で漫画を書き続けるから、海外のファンは心配しなくていいからね。 それじゃ」
そこで動画は途切れた。
「……最後、漫画って言わなかった?」
「……う、嘘だ」
マモルは立っていられず、膝を地面につけた。
「ど、どうしたのよ?」
「……」
マモルはワナワナと震え、頭を抱えている。
さち子が駆け寄り、肩を揺すった。
「何に気づいたのよ、ねぇ!」
「……マンボウは、ワンピークの作者、尾田A一郎だ」
「……嘘でしょ!?」
しかし、それで合点が行くことが多いのも確かであった。
爆弾やライオンによる無差別テロは、自分の作品を酷評する人間への当てつけ。
核爆弾も、この作者の資金力なら、作れないとは言い切れない。
そして何より、マンボウは尾田A一郎が似顔絵としてよく使っているのだ。
「核爆弾なんて、絶対爆発させるわけにはいかないわ…… 尾田A一郎は、どこに居るのかしら?」
「これを使えば分かるかも」
鈴子が、ライオンのネックレスを掴んで、こちらに見せてきた。
「このアニメイトなら、相手の匂いを記憶して、地図上から居場所を特定できる」




