第10話 そして、勇者であるために―3
「もちろん、優勝者には王からの褒美もあるぞ」
「姉さん、彼はもう今日褒美を貰えるんだから。わざわざ褒美目当てに出る意味もないもないんだよ」
リュートの突っ込みにも、セリアの勢いは止まることを知らない。
「そうだ、勇者様は伝説の剣であるティルヴィングを持っているのだろう? 灼熱の神ベオウルフが、直に子孫の人間に渡したとされる魔剣。一度、見せてもらうことは叶わぬか?」
「姉さん、よだれよだれ……。まったく、名器を前にすると、いつもこうなんだから」
セリアの口の端から垂れたよだれを、持ち歩いていた雑巾で綺麗に拭き取るリュート。
一緒に花瓶から零れた水も吹いてくれた。
意外と良い人なのかもしれない。
「っていうか、そんないわれがあったんだ……。すごいね、なんで最初から持ってたんだろう?」
何気なく持ってたティルヴィングが由緒ある名剣なのだと分かり、ぼくは改めて驚いた。
「って、ちょっと待ってくれ」
迫ってきたセリアを手で制し、ナギは一度話を遮る。
「なんだ!? まさか見せてくれないか!? そんな生殺し!!」
「ごめんね、姉さんは重度の武器マニアでもあるんだ……。意地悪しないで、見せてくれないかな?」
「いや、そうじゃなくて。……なんでオレが勇者だって、お前らは知ってたんだ?」
ナギの言葉に、ぼくはハッとした。
確かにぼくらは、身分を隠して入国をしたはず。
招待状を貰った際も、本名を名乗ってはいないはずだ。
「何故って」
「それは――」
セリアとリュートは顔を見合わせた。
ティルヴィングだって、ルクスパレスに入ってからは一度も抜いていないはずだ。
“朝の出来事”のこともある――ぼくらは既に、罠に嵌められていたのだろうか?




