第10話 そして、勇者であるために―2
「ええと、何……? 何なわけ? あんたたち」
突然の来訪者に、ナギはあからさまに迷惑そうな顔をしている。
「ほう。これがドラゴンを倒したとかいう勇者か……。思ったよりちっこいな」
「すまない! 姉が不躾で本当にすまない!!」
思ったことをそのまま口走る姉に対し、全力で謝り倒す弟。
二人とも、年は二十代前半だろう。
着ている服にも高級感があり、見るからに生まれの良さそうな姉弟だった。
「いきなりすぎてよく分かんないんだけど……説明してくれない?」
「姉さんの名前はセリア・ブラウベル。“鉄血の聖女”と言えば、聞いたことはあるだろう?」
「そういう弟はリュート・ブラウベルだ。“音速の聖騎士”と言えば、知らないわけはないな?」
自己紹介ならぬ、他己紹介だった。
ただ、紹介をしてもらったところ申し訳ないが……。
「ハァ? 鉄血? 音速?」
「なッ……我らブラウベル姉弟のことを、知らないというのか!?」
「姉さん、彼らは旅人なんだから、知らなくても不思議じゃないって。まあ僕はともかく、前王の首を討ち取った姉さんのことを知らないのは、正直、ちょっと驚きだけどね」
謙遜しているのか自慢しているのか、よく分からないリュートの言い回しだった。
というか、そんな有名な人たちなのか!?
「ナ、ナギ。なんか凄い人たちみたいだから、もうちょっと行儀よくして……」
「いやいや、ノックも無しに部屋に入ってくるようなヤツに対する礼儀なんて、こんなもんで十分だっつーの」
さっきまで普通に座ってたのに、いつの間にかちゃっかり足を組んで、わざとらしくテーブルに肘をついているナギ。
「な、なんだと!? 僕の姉さんに対して、そんな態度を取るとは……ッ!」
「まあまあリュート。元気があって良いことじゃないか。せっかくなら、明日の武闘会にも出場してみてはどうだ?」
どうやらリュートの方は、常識があるように見えて相当なシスコンのようである。
セリアの方は、我が道を進むが心は広いというところか。
「武闘会って、そんな物騒なモンまであるのかよ」
「聖誕祭では恒例の行事だ。血気盛んな若者から、由緒正しき騎士までな。多種多様な戦士が剣を交える機会などそうそうないことだ。どうだ? 血湧き肉踊る、面白そうな催しだろう?」
ニッと不敵に笑うセリア。
この人、見た目はめちゃめちゃ綺麗で、腰まで伸びた長い髪からしても、かなり女性的な印象なのに、中身は根っからの武闘派のようである。




