第9話 太陽の都―9
「使われてない地下道だってのに、ずいぶんと詳しいんだな」
「私も色々と調べ歩いたからね。ただの下水道にしては妙に広いし、他の目的があったんじゃないかという噂もあったんだ」
「他の目的?」
「例えば……秘密裏に行われている人体実験の施設に繋がっているとかね」
ハバキの言葉に、ぼくとナギの間に衝撃が走った。
どういう意味だ? この人は、どこまで知っているんだ?
「そ、それってモゴゴ」
聞き返そうとした瞬間、ナギがぼくの口を塞ぐ。
不思議に思ったハバキが振り返った時には、もうその手は離されていたが。
「なんだ? 君たちは何か知っているのか?」
「いや、そんな話聞いたこともねーし。本当にあるんだったら見てみたいくらいだな」
「私もそう思って、時間がある時はこの地下道を調べていたのだがね。結局、そんなものは見つからずじまいだ。何しろ、思ったよりこの地下道の利用者は多いみたいだからね」
反対側から歩いてきたのは、ランタンを掲げた身なりの汚い男である。
ハバキが軽く会釈すると、男はそのまますれ違って行った。
「地上にも顔を出せないような人間が、この地下道には住んでいるんだ。罪を犯したものや、先の内乱で前王派についていたものなど。その要因は様々だろうけどな」
確かにそれだけの人間がいるのなら、地下道がルクスパレスの秘密の通路という可能性は低そうである。
「さて、そろそろ宿に着くぞ……。元々、私は仲間の療養のためにここに来ていてね。宿では仲間の世話を見ているので、あまり顔を合わせることもないだろうが。まあ、同じ宿のよしみだ、何かあったらよろしくな」
療養? それで何でこんなスラム街に?
疑問は浮かぶばかりだったが、ハバキが壁についていた取っ手を掴んで地上へ上り始めたので、それ以上の話は出来なかった。
結局のところ、天狗とハバキは関係がない他人なのだろうか?
同一人物……という可能性は無いと思う。
天狗はハバキほど大柄ではないし、髪があったし。
予想外の出会いに戸惑いつつも、こうしてぼくらは、ルクスパレスでの一夜を何とか過ごすことが出来たのだった。




