第9話 太陽の都―8
真っ暗闇の中、おぼろげな光に徐々に目が慣れていく。
地下に広がった空間の中で、ナギは知らないおじさんにお姫様抱っこされていた。
「あはは、何してんのナギ」
「な、なんだお前は!? 早く下ろせって」
じたばたと暴れだしたナギに驚いて、おじさんはナギを取り落とした。
腰から落下したナギは、その場でヒィヒィ言って身悶えする。
「おいおい、せっかく助けてあげたんだから、感謝して欲しいくらいだが……。まあ、驚かせてしまったことは謝るよ」
素直に頭を下げるおじさん。
助けた、という言葉を聞いて、ぼくとナギは目を見合わせた。
「んだよ、それ? どういう意味だ? つかここは何だ?」
「ここはルクスパレスの地下道さ。かつてルクスパレスには下水道を作る計画があってね。それが内乱の際に一部崩れてしまい、計画自体が頓挫してこの道だけが残っている」
確かに上を見上げると、マンホールの蓋のようなものがピッタリと穴を塞いでいた。
どうやらナギは、この穴から地下に引き込まれたようである。
「詳しいんだな。その割には、ルクスパレスの人間にも見えないが」
事情通のおじさんに対して、ナギは警戒心を露わにした。
というのも、おじさんが着ている服は天狗が履いているのと同じ、作務衣のようなものだったからだ。(天狗はいつも上半身裸だけど)
もしかしたら天狗の関係の人間かもしれないと思ったのは、ぼくもナギも同じだろう。
「私はハバキという。なに、ルクスパレスのスラム街には色々な人間が流れ着くものでね。私もその一人だよ」
怪しい。
そう言われるとますます怪しい。
ハバキはかなり大柄な体格で、もしかしたらランドよりも背丈があるかもしれない。
仮に天狗の仲間だとしたら、相当な強敵になることは間違いなかった。
ただ――
「ねぇ、やっぱり良い人なんじゃない? 全然敵意とかは感じないけど」
「ばか、見た目に騙されるなって。そういうヤツこそ一番危なかったりするんだ」
ぼくとナギはこそこそとやり取りする。
糸目のハバキは見るからに温厚そうで、優しい低い声も相まって、悪人感は皆無に近かった。
頭もスキンヘッドというか、つるつるに剃ってあり、第一印象は何でも相談できそうなお坊さんという感じだった。
「ハバキさんは、どうしてぼくらを助けてくれたんですか? というか、ぼくのことを見て驚かないんですか?」
「ははは……同じ宿に泊まってたのに、全然覚えてないんだな。まあ、君たちも若いのにワケありなのかと思ってね。老婆心から手助けしてしまったよ」
もう一度顔を見合わせる、ぼくとナギ。
ルクスパレスに来てから初めて見るものばかりだったので、まったく記憶に無かったが、どうやらハバキは既にぼくらのことを知っていたらしい。
「とりあえず、歩きながら話そうか。こっちに行けば、宿のすぐ近くに出られるよ」
歩き出したハバキ。
思わぬ親切に戸惑いつつも、ナギはその後をついていった。




