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第9話 太陽の都―5

「太陽神って、どんな神様なんだろうね?」


 何となく思っていたことを口にする。


 ぼくらの世界では聞いたこともない神様だ。

 きっと異世界にも、多くの神様がいて、それぞれの宗派があるのだろう。


 ナギはさぁな、とそっけない返事をして、口の周りを紙で拭いた。


「あ、ペトラルカちゃんそっちのソース取って欲しいッス」

「食べながら喋るなって、いっつも言ってるだろォ!? ラウラぁ!」


 が、突然後ろから聞こえてきた声に、ナギはブフッと吹き出した。


「しっかし、あのブタ使いのヤロー……ホントむかつくよな、アイツのせいで俺の査定が駄々下がりだ」


 苛立ちを露わにしながらペトラルカは話している。

 ラウラはそんな愚痴を聞き流しつつ、目の前の大盛りの定食に夢中になっていた。


「最っ悪だ……」


 テーブルに突っ伏すナギ。

 それはぼくも同感だった。


 ペトラルカたちに会わないようにわざわざ治安の悪いところまで来たのに、何故向こうがここまで来るのか。

 運の悪さも、ここまで来ると笑うしかなかった。


 ……地獄のような時間が続く。

 一分一秒が恐ろしく感じられた。


 ぼくらが息を潜めていることなど、向こうは何も気付いていないようで、食事の時間は淡々と続いている。


「ねぇ、向こうはまだ気付いてないみたいだよ。さっさとお店を出ようよ」


「バカ、今のタイミングで出てったら絶対怪しまれるって。ここはじっと待機するんだ」


 ぼくとナギはボソボソと話し合う。

 その間にペトラルカの愚痴は徐々にヒートアップしてきて、その勢いは止まることを知らなかった。


「しっかし、シオン様も厳しいよな。次ミスをしたら降格だって言ってたぞ」


「それならそれでいいんじゃないッスか? ペトラルカちゃんに中間管理職は向いてないッスよ」


「ハァ!? お前、俺たちが何のために田舎から出てきたのか……忘れたのかよ!? こんなところで……止まるわけにはいかないんだ」


 バンッ、と勢いよくテーブルを叩く音。


 口から心臓が飛び出そうなほどビックリした。

 ぬいぐるみの体に心臓は無いけど。


「なんか酔ってない? 出て行けるんじゃないの」


「シッ。……こいつは、逆にチャンスかもしれないぞ。ほっとけばどんどん情報が漏れてくるからな」


 ニシシと、こんな状況だというのにナギは悪い笑みを浮かべている。


 確かに、シオンというのは初めて聞く名前だった。

 文脈からして、二人の上司のようだけど。


「ゼロゼロイチも再調整が必要ッスね」


「ああ、あれからアイツ、ナギだとかシューだとか、わけの分からん単語を言い始めたな。もっぺん、精神の漂白化を試してみるか――」


 そのペトラルカの言葉が終わるよりも早く。

 ガタン、と大きな音を立ててナギは立ち上がっていた。


「あ……」


 やばい、と思ったが時既に遅し。

 椅子は床に倒れて、ペトラルカはおろか宿中の注目を一斉に浴びてしまっている。

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