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第2話 勇者の掟―2

「この村の子供じゃない?」


 山賊に捕まっていた少女を村に連れて帰った後、ぼくらを待ち受けていたのは思いがけない事実だった。


「ああ……ウチの村からは金目のモンと野菜しか取られておらんよ。しかしおっかねぇなぁ、あの山賊ら、そんな非道なことにまで手を出していたなんて」


 それだけ言って、村長は自宅へと戻っていく。

 日が暮れ始めた夕焼けの村、カラスの鳴き声だけがマヌケに響いていた。


「いや、ほったらかしかよ!? 普通この村で保護したりしないのか!?」


「それこそ、誘拐になっちまうべ。おめぇもしゃっきり二本の足で立ってるならよ、自分の力で自分のねぐらまで戻ればいいんだ」


 びっくりして大声で叫んだナギに対し、村長は背中を向けたまま答えると杖で器用に玄関の扉を閉めた。


 取り残されたぼくとナギは、ここでようやく自分たちの置かれた状況に気付く。

 つまり、厄介ごとを押し付けられたのだと。


「うわームカつく! せっかく山賊退治までしてやったのに、面倒ごとにはこの態度かよ!?」


「ちょ、ちょっとナギ……さすがに、この子が聞いてる前ではかわいそうだって」


「ん? 別に関係ないだろ。そいつ、どうやら言語を理解してないみたいだからよ」


 話に置いてけぼりにされた少女は、むすっとしながらフードを深く被って、誰とも目を合わせないようにしていた。


「理解……してない?」


「ああ、山から下りる時に気付かなかったか? 身振り手振りは伝わるけど、言葉によるコミュニケーションはまるで取れないみたいなんだ。だからまあ、この村の出身じゃないのかもしれないとは思ってたけど……逆に言えば、どこの生まれなのかも全く聞き出せない、ってことになるな」


 ナギはそっぽを向いている少女の後頭部を人差し指でツンツンとつついた。

 少女は不愉快そうに、フードを押さえて俯いている。


「ちょ、やめなよナギ。いじめるのはよくないって」


「いじめじゃねーよ、コイツが恩知らずな態度を取るから悪いんだ。ほれほれ、どこまで耐えられるかな」


 つっつきを加速させていくナギ。

 いい加減、少女のイライラもピークに達しているようで、その背中がぷるぷると震えていた。


「がうーっ!!」


 すると突然、少女はそう吠えてナギの右腕にかぶりついた。

 いてぇーっ、とナギは悲鳴をあげてぴょんぴょんその場を飛び回る。


「へ、へへ……なんだよ、ちゃんと感情表現も出来るんじゃねーか……って、あれ?」


 その時、ぼくとナギは気付いてしまった。

 それまで少女が頑なにフードを取ろうとしなかった、その理由わけに。


 ナギに噛み付いた拍子にめくれた、少女のフードの下には――明らかに人間のものではない、犬や猫のような獣の形の耳がついていたのだった。

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