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第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―12

 徐々に鮮明になっていく意識。


 ここはどこだ?

 目を開けているはずなのに、何も見えない、真っ暗な闇の中だ。


 どこかで、誰かの話し声が聞こえる。


 おかしい。

 音は聞こえるのに、何も視界がないなんて。


 もしかして……ぼくの目は、何も見えなくなってしまったのか?

 ナギに力を譲り渡した、あれがキッカケとなって……。


「ね、ねぇ、誰かいるんだろ? 誰か、ねぇ!?」


 周囲から強い力が加わっていて、身動きが取れなかった。

 辛うじて声を発したみるが、周囲のものに音が遮られているのが分かった。


 ああ――そうか。

 目が見えなくなったんじゃない、ぼくは、あのまま瓦礫の下敷きになったんだ。


 だとしたら、外の世界で、誰かがぼくを探しているのかもしれない。

 ぼくはもう一度、大きな声で自分の存在を示そうとする――その時だった。


「あら、目を覚ましたのですわね!?」


 ジーッとファスナーを開ける音がして、急に目の前の視界が開けた。

 むんずと体を掴まれると、目の前には、デンスの顔がドアップになって映る。


「良かったですわ、シュー様! 本当に心配したのですわよ!?」


 キラキラした目でぼくを見つめるデンス。

 え、ええと……これはいったい、どういう状態なんだ?


「もう動けるのか? どうやら今回は、こっちの方が重症みてぇだな」


 ナギは、ランドに背負われた状態でぐったりと眠っていた。

 まだ意識は無いようだが、体のあちこちに包帯が巻かれ、手当てはされているようだった。


「ちょ……あんた、ここまで来たんだから交代しなさいよ。いつまで可憐な美少女に、こんなもん引っ張らせるつもり」


「あーら、私は、シュー様との再会を心から喜んでおりますの。無粋なことを言わないで欲しいですわっ。……まあ、ポーチの中にシュー様を入れているのも、それはそれで楽しかったのですが……」


 不満げに口を尖らせているのはパメラだった。


「パメラ、良かった、君も――」


「しっ。……余計なことは、言わなくていいから」


 せっかく生きて会えたことを喜んだのに、何故か怒られてしまった。

 首にはスカーフを巻いているし、天狗にやられたことを、気にしているのだろうか。


「……あ、そうだ! 天狗は……あの時、いったい何があったんだ……?」


「何があったって、そりゃこっちが聞きてぇよ。オレとデンスがドラゴンと戦ってたら、いきなり下から竜巻が飛んで来るんだもんな。おかげで、ドラゴンのドテっぱらには大穴が空いたがよ」


 どうやら、ぼくとナギが戦っている間に、二人も戦闘を繰り広げていたらしい。

 だから、さっきからパメラが布に包んだドラゴンの首を引っ張っていたのか。


「あーもーっ! これ重いっ! いい加減持つの交代してよっ!」


「ま、まあ……俺はナギを背負ってるからな? 頼むぞ、デンス」


「まったく……誰があなたのことを助けてあげたと思ってるんですの? これは一つ、貸しですわよ?」


「む、む……むかつくーっ!!」


 憤慨するパメラ。

 あまりにもいつも通りの空気感に戻っていたので、すっかり呆気に取られてしまったが。


 ――ぼくが気を失う前。

 あの時見た光景は、なんだったのだろうか。


「……ナギ」


 眠るナギの顔を覗き込む。

 ナギの体から湧き出ていた、禍々しいまでの力。


 あれは本当に、“ゆうしゃ”の力なのか?

 一日の制限を超えてしまったから……あんなことが起こってしまったのだろうか?


 ぼくらは生還した、生きて帰って来れたはずなのに。

 拭いきれない一抹の不安が、ぼくの心に暗い影を落としていくのだった。

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