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第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―11

「シュー……お、い、シュー……」


 弱々しいナギの声が聞こえる。

 ブラックアウトする視界の中、ほんの少しだけ、覚醒する意識。


 ナギの声だけが、今のぼくの生命線だった。


「くそッ……やられて、たまるかよ……こんな、とこで……」


「“ゆうしゃ”の力を使うつもりか? やめておけ、これ以上は貴様の体がもたないだろう。どのみち死ぬのであれば、少しでも苦しまない方が良いだろう」


「るせェ……! それで……シューが助かるのなら……オレの命なんて、いくらだって……」


 どうやらナギは、“ゆうしゃパワー”を使おうとしているらしい。

 一日三回の制限があるはずなのに、それ以上使うなんて……ナギはどうなってしまうのだろうか。


 それに、ぼくはぼくのことなんて……どうだっていいんだ。

 生き残るのは、ナギの方でいい。


 ナギは頭が良くて、いつもかっこよくて……ぼくの憧れだった。

 きっとナギなら……ぼくがいなくなっても、この世界でうまくやっていけるはずだ。


 だからぼくは……ぼくに残された力を……ナギに託すことにした。


 皮肉なものだけど……デンスに習った魔法の使い方、こんな形で利用することになるなんて。


「生きてっ……ナギ」


 今は黒い靄を通して、ぼくの体とナギの体は繋がっているはずだった。


 その導線を意識する――ほんの少しでいい、ナギが、四回目の“ゆうしゃパワー”を使う、足しにしてくれれば……!


 明確にイメージした、ぼくの中の魔力の塊を――ナギの中に送り込む。


「ああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 薄れゆく意識の中……ぼくが最後に見た光景は、ドス黒い靄に包まれたナギ。

 いや……あれは、ナギ自身から黒い靄が発せられているのか……?


「なん、だっ!? これは……っ!」


「うああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 靄は渦を巻き――竜巻となり――やがて牙を持った一匹の獣と化して、力のままに遺跡を壊していく。


 ぼくの体の上に降り注ぐ瓦礫片。

 差し込んだ眩しい太陽の光が、ぼくが見た最後の光景だった。

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