第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―10
「まだ……生きてるっていうのか!?」
「まさか、ここまで思い切りの良いヤツだとはな。少し見くびっていたよ」
くぐもった声。
床に転がる天狗の生首から発せられたものだ。
「だが、所詮はガキのやること……敵の生死すら確認せずに勝利の余韻に浸るとは、笑止千万よ」
天狗の首の切断面から、にゅるると黒い触手が伸びる。
そしてそれは、同じく体の方から伸びた触手と絡み合い、叩き切ったはずの天狗の首が、ぴたりと元通りくっついていった。
そのあまりのおぞましさに、全身が凍りつき、動けなくなる。
「ま、まさか……その天狗の面が、本体なのか?」
「さて、な。そんなこと、今から死ぬ貴様らにはもう関係ないことだ」
黒い靄の一本が蛇となり、ぼくに襲い掛かってきた。
倒れたナギを目の当たりにし、放心状態のぼくは、為す術もなくその毒牙にやられてしまう。
「あ……」
床に叩きつけられる衝撃。
横たわる視界の中、同じく倒れたままのナギと目が合った。
「に、にげ……ろ……シュー……がっ!?」
ナギの体にも、無数の蛇が喰らいついていく。
苦痛に歪むナギの表情。
その目からは、徐々に光が失われていく様子が見て取れた。
うそ……だ。
ぼくはともかく、ナギが、こんな無様な姿でやられるなんて。
「ごめん……ナギ。ぼくも、もう……」
血の通わない体のはずなのに、ドクドクと何かが流れ込む度、気が狂いそうなほどの痛みが全身をはしった。
意識が……徐々に薄れていく。
ほんとうに……ぼくらは……ここまで、なのか……。




