第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―7
「――おっ、と」
しかし、その直前で天狗は足を止める。
床に手を当てたナギの挙動を、天狗は見逃していなかった。
「何を仕掛けた?」
「……るせェ、それを言うバカがいるかよ」
「貴様のその“ゆうしゃ”の力、使える回数に限度があるのだろう? でなければ、初めから無尽蔵に使いまくればいいわけだ」
淡々と話す天狗だが、全て図星だからタチが悪い。
いったい、天狗は何を考えているのか。
ナギの足には、まだ靄の蔓が絡み付いている。
「ンなこと言ってる暇があるなら、こっちからいかせてもらうぜ――」
「ああ、やってみろ」
右手をかざす天狗。
その動きに合わせて、蔓の先端がパカッと口を開き、蛇の頭部となってナギの脚に牙を突き立てた。
「ぐあァ!?」
「ど、どうしたのナギ!? 早くやらないと、やばいって!!」
しかしナギは――“ゆうしゃパワー”はおろか、立ち上がろうともしない。
「回数制限のある力だ。確実に相手を仕留められるタイミングでなければ使えまい」
「ぐ……」
「だから貴様は……限界まで敵を引き付け、一撃で屠る戦い方しか出来ないのだ。そして、それは手の内を読まれてしまえば実に脆い戦略である」
さらに数匹の靄の蛇が、ナギの体に食らいついた。
ナギは身悶えするだけで、何の抵抗も出来ないでいる。
「ならば我は、このままじわじわと貴様を嬲り殺してやろうぞ。なァに、貴様の“ゆうしゃ”の力は、そのまま我が吸い取ってやる。残弾を撃つよりも先に、貴様が力尽きる方が先だろうな」
天狗の面で表情は見えないが、その肩は愉快そうに小刻みに上下していた。
さ、最悪だ。
天狗はナギの力を見切った上で、その力が及ばないギリギリのラインから、ナギが衰弱するのを待とうとしている。
ナギの“ゆうしゃパワー”はあと何回使えるんだ?
ドラゴンに襲われた際に一度火球を撃っているから、多くてあと二回で、ここに来るまでに使っていればさらに少ない。
そもそも既に力を使い果たしていて、あの動作すらブラフの可能性だってあるのだ。
でなければ、何の策も無しに真正面から切り込むことも、ないのかもしれない。
「く、くそ……」
ぼくは……ぼくはどうすればいい?
このままナギまで殺されるのを、黙って見ているしかないのか。
いや……それは絶対にダメだ。
「ぼくが……なんとかしなくちゃ……っ!!」
今度こそ、ぼくが守ってみせる。
大切な人を……二度と失わないために……!!




