第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―4
――意識が朦朧とする。
全身が痛みで痺れ、体がバラバラになったようだ。
「う……」
真横になった視界。
そうだ……なんでか分からないけど、天狗の攻撃だけはぼくにも痛みがあって、ぼくはそれで弾き飛ばされて――
「パメラッ!?」
混濁した記憶が戻り、ぼくはハッとして宙に浮いた。
突然襲い掛かってきた天狗。
パメラはぼくを守ろうと、真っ向から天狗に立ち向かい、そして――
「ど……して……」
ギリギリと骨の軋む音がする。
天狗の右手で首を絞められたパメラは、そのまま壁に押さえつけられていた。
「わた……しの……ま……」
「何度試したって無駄だ。我に精霊の力なぞ効かぬ」
そう、パメラの魔法の銃は、何度も天狗の体に直撃していた。
だが、全てが黒い靄によってかき消され、裸の上半身には傷一つ付いていなかったのである。
「それ……なら……!」
辛うじて意識を保っていたパメラは、残る力を振り絞り腰のポーチからナイフを取り出した。
戦闘用のものではない、果物ナイフであるが、至近距離での一撃には十分な得物だった。
刃先が天狗の腹部に刺さった――ように見えたのだが。
「甘いな」
空いていた天狗の左手が、しっかりと刃を掴んでいた。
柄やパメラの手などではなく、刃を直接、である。
それなのに、天狗の左手からは血の一滴も流れ出る様子がない――いや、黒い靄だけが、そこから漏れ出していた。
「やれやれ……だ。貴様など、初めから眼中にも無い。抵抗しなければ、死ぬ必要もなかったのにな」
天狗の右腕の筋肉が隆起し、ぐっと手に力が込められたのが分かる。
パメラの全身から力が抜け落ちて、天狗にもたれかかるように崩れ落ちていった。
「あ……え……?」
まさか……殺したのか?
「どう……して……」
天狗が狙っていたのはぼくらだったはず。
パメラが殺される必要なんて、何も無かったのに。
「どうして、とはこちらの台詞だな。邪魔をするから排除したまでだ。何もしなければ、手を出すつもりもなかったのだが」
天狗はまるでゴミでも捨てるように、パメラの体を無造作に投げ捨てた。
地面を転がるパメラの体。
「あ……ああ……っ!!」
瞬間、記憶がフラッシュバックする。
血まみれの床。
あらぬ方向に折れ曲がった手足。
なんで――せっかく今まで忘れていたのに――
ぼくはまた――助けられなかったのか。




