第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―3
「私はね。ドラゴンの心臓が欲しいの」
「え……な、なにそれ」
「ちょ、何キモっ! みたいな反応してんの!? いい!? これにはれっきとした理由があって」
内心ドン引きしていたのが伝わってしまったらしい。
赤面したパメラはコホンと咳払いをすると、気を取り直して話し始めた。
「実は私はね、冒険者としてちゃんとしたパーティを組んでて、その仲間を助ける秘薬を作るのに、ドラゴンの心臓が欲しかったの」
「秘薬って……その仲間は、そんなに大変な状態なの?」
ぼくが聞くと、パメラは神妙な面持ちで頷いた。
「うん……。……まったく服を着ようとしないんだよ」
「…………んーっと、聞き間違い、かな?」
「だぁかぁら!! そのキモっ! みたいな反応はやめなさいって!!」
そんなこと言われたって、そんなことを言うそっちが悪い。
「怪我とか病気じゃないってこと?」
「まあ、ある意味頭の病気みたいなもんなんだけど。実は私たちが見てない間に、悪い魔導士に術をかけられてしまったみたいなの」
「……服を着なくなる魔法なんて存在するんだ」
「そういう意味じゃなくてっ!! 精神を幼児退行させる魔法みたいで……。なかなか、精神系の魔法を使える術者っていないんだよ? 少なくとも四大精霊の系統ではないし、かなりマイナーな精霊の力を行使したみたい。だから天才美少女ガンナー兼天才美少女魔導士でもある私にも解けなくて、文献を当たってみたら、相当強力な気付け薬が必要になるみたいなの」
なるほど、何となくだけど、パメラの境遇が分かってきた。
「じゃあその人は……ちっちゃい頃服を着たがらない子供だったんだね」
「バカアンドアホっ!」
スパカンっと頭をひっぱたかれた。
痛い。いや正確には痛くは無いけど、凄い悪口のセンスに心が痛い。
「もーっ……この話をすると、みーんなバカにするから嫌だったの!!」
「い、いやその、バカにしたわけじゃなくてさ。でも正直、みんなそう思うって」
「私がバカと一緒にパーティを組んでるみたいじゃん!!」
いやあんたも相当ひどいこと言ってるぞ。
「まあ、そういうことなら、出来るだけぼくらも協力するからさ……。早くみんなを探して合流しようよ、暗黒化したドラゴンなんて、ぼくらだけじゃ勝てるか分からないし」
「そんなのヨユー……って言いたいところだけど、確かに暗黒化の原理は未だに分かってないんだよね。どうやら、私たちが使う魔法とは違う原理の現象みたいだし。厄介なヤツに当たっちゃったかな……ってあれ?」
ふとそこで、パメラが何かに気付いて顔をあげた。
緩やかな上り坂の先に、光源と、それに照らされた人間のシルエットがある。
「なんか開けたとこに出たみたいだね。それにあの人、あんたの仲間のおっさんじゃないの? かなりガタイがいいし」
「うん、ランドさんかな……おーい、こっちだよーっ!」
そう言って呼びかけた直後――ぼくの体は固まってしまった。
「ん? どしたの急に止まって……っていうか、あいつのシルエットなんかおかしくない?」
ど、どうして。
どうしてあいつが、こんなところにいるんだ。
「なんか妙に鼻が長いっていうか……お面でも被ってんの? あれ?」
天狗の面の男。
影でも分かるその長い鼻と、筋骨隆々としたその体躯は、確かにぼくらを襲ったアイツのシルエットだったのだ。




