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第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―2

「た、確かに体はこんなだけど、魂は――」


「まさか、ホンモノの人間の魂を材料に使ってるんじゃないでしょうね? 人体を素材にするのは協会の規則に反するし、魔導士の中でも一番の禁忌とされている奥の手だもの。もしもそうだとしたら、あの子を然るべきところに突き出さなきゃいけないけど……」


 余計なことを口走らなくてよかった。


「とりあえず、話はここを脱出してからにしようよ! ぼくのことなんて、いつ話してもいいんだからさっ」


 強引に話題を変えたのがいけなかったのか、パメラはますますぼくに顔を近づけて、じーっと直視してきた。


「そ、そんなに見つめられると……照れちゃうなぁ……な、なんて……」


「まあ、ファミリアに指図されるのはシャクだけど……今は確かにその通りね。元来たルートを辿ればいいってわけじゃないみたいだし、早く探索を始めなくちゃ」


 ため息混じりに言って、パメラはようやくぼくから視線を外した。


「元来たルートって、ぼくが空を飛んでいけばいいんじゃないの?」


「だから、ここはかつての下水用の空間で……まあ、言うより見た方が早いよね。調べたいなら調べてくれば?」


 松明を高く掲げるパメラ。

 おぼろげな明かりに照らし出されたのは、大きな空洞と、その壁に空いた無数の横穴だった。


「わー!? なんだこれ」


「恐らくは、いくつもの水路が集積するポイントが、ここだったってことでしょ。私達は、あの穴のどれかから転がり落ちてここまで来たってわけ。逆に言えば、だからこそ落下の衝撃で致命傷を得なかったってことなんだけどね」


 どうやらこれは、想像以上に大変な迷宮へと迷い込んでしまったようである。


「とりあえず、大きな流れはあっちに続いてってるみたいだから。進んでみるしかないよね」


 そう言ってパメラが松明で指したのは、巨人の口のようにぽっかりと空いた、薄暗い横道だった。



***



 しん、と静まり返った空気の中、パメラの足音だけが響いている。


「さっきのドラゴン、何なんだろうねぇ」


 沈黙の重圧に耐えられず、ぼくは自ら話を切り出していた。


「どうやら普通のドラゴンじゃないみたいだね。最近よく騒がれてる、暗黒化したモンスターだったみたいだけど」


「暗黒化?」


 聞きなれない単語だったので、思わず聞き返していた。


「それって、普通のモンスターとは違うの?」


「そう。さっきのドラゴンも、妙な黒い靄に包まれてたでしょ?」


 確かに、あの黒い靄の持つものには今までに何度か出会っていた。


 ラ・クリプスに来てから初めて戦った魔物である、エルシール・タランチュラ。

 そして、突如としてぼくらの前に立ちはだかった、天狗のお面を被った謎の男である。


「あの靄を持つモンスターは最近よく報告されていて、暗黒化したモンスターは、本来より攻撃的かつ、高い知性を持つようになったらしいの」


「そ、それってぼくらにとっては」


「そう。めっちゃヤバイってこと」


 しかも今度の相手は、普通のモンスターならまだしもドラゴンである。


「ね、ねぇ。いくらお金のためとはいえ、さすがにそんなヤツに挑むのは無謀なんじゃない?」


「……は? 私がいつ、お金のためにドラゴン退治に来たって言ったのさ」


「え? 違うの?」


 ルクスパレス国王から褒美が出るって……そう聞いてここまでやって来たと思ったんだけど。

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