第8話 ダンジョン・イン・ザ・“ゆうしゃ”―1
気を失ってから、どれだけの時間が経ったのだろうか。
「わっ」
不意に現れた光源に驚いて、ぼくの意識は覚醒する。
「よかった。全然動かないから、死んじゃったのかと思った……私のせいで」
松明を片手にぼくの前に立っていたのは、全身煤だらけになったパメラだった。
そうだ、ぼくはパメラに体を掴まれて……古代遺跡の下層まで、一緒に落下してきたんだった。
「ここはどこ……? みんなとは、はぐれちゃったの?」
「お生憎さま、ここには私しかいないわよ。残念だった?」
パメラは不機嫌そうに、ツンとそっぽを向いてしまった。
別に怒らせるつもりなんてなかったのに。
だけど、彼女は彼女なりに、この状況を生んでしまった責任を感じているのだろう。
「ちょっと周りを見てみたけど、ここは遺跡の中でも下水にあたる空間みたいね。この先には水路が続いているわ。もちろん、今は水なんて流れていないから、ただの通路として通れるけど」
「あ……下見とかしてくれたんだ。ごめん、いつまでも気を失ったまんまで」
「私は天才美少女ガンナーだから。そのくらい、お茶の子さいさいだっつうの。……まあ本当は、あんたを探してた時に、自然と見る必要があっただけなんだけどね」
ぼくを探してた?
そう言われて、ぼくはようやく自分の置かれていた状況に気がついた。
ぼくの脇に、こんもりと積まれたガレキの山。
きっとパメラが、ガレキに埋もれてしまったぼくを一生懸命掘り起こしてくれたのだろう。
「って、その手!?」
パメラの白く細い指は真っ黒に汚れていて、爪の先には血が滲んでいる。
ぼくに指摘されると、パメラはチロッと小さく舌を出した。
「おしゃれと器用さを気にして、指出しグローブを選んでたのは失敗だったかな。今度から、ちゃんとしたグローブも予備で持っておくことにしよ」
よくよく見ると、パメラの右足には応急処置の包帯が巻かれていて、歩く姿もぎこちなかった。
こんな状態で、彼女はぼくのことを探し出してくれたのか。
「ご、ごめんっ。足も怪我してたんだね……大丈夫? ここから歩けるかな」
「悪いけど、あんた如きに心配されるようなヤワな鍛え方してないから。それに、あんたをほったらかしにして、アイツに怒られても寝覚めが悪いしね」
アイツ……というのはナギのことだろうか?
「デンスのファミリアなんでしょ? まあ、魔法生物なんて、いくらでも作り出せるんだろうけど」
ズコーっ、と宙に浮いてなければずっこけているところである。
「ファミリアじゃないし、魔法生物でもないよ、ぼくはっ!」
「え? 違うの?」
心底意外そうな顔で、パメラはぼくを見つめている。
「じゃあ何? なんなわけ? こんな小さなゴーレムなんて成功事例が無いし、よく喋るからぬいぐるみに擬似的な魂を入れた、魔法生物なのかと思ってた」
矢継ぎ早に質問してくるパメラ。
しまった、墓穴を掘った感じがするけど……ぼく自身、なんでこんな体になってるのか分からないし、彼女の質問には答えようがない。




