なぜなに? ラ・クリプス―1 『世界について』
それは旅路の途中でのこと。
「ねぇデンス」
「なんですの? シュー様」
「この世界には、どんな町や国があるの?」
そう質問したぼくのことを、デンスはキラキラした目で見ていた。
「え……な、なんですの急に? シュー様の方から私に声を掛けて下さるなんて!」
「い、いや、ぼくもこっちの世界に来て長くなってきたし……あまりこの世界のこと知らなすぎるのも、不便だなと思って」
「こっちの世界?」
デンスの懐疑的な眼差し。
う、しまった、余計なことを言ったか?
「ああ、そっか! シュー様は元々魔法生物ですものね! ラ・クリプスのことはご存じなくて当然ですわ!」
が、デンスは勝手に都合の良いように解釈してくれた。
とりあえず、妙な勘繰りを入れられなくてホッとする。
「というか、ナギはシュー様にそういうことを教えてあげてないんですの? やっぱりヒドイマスターですわね!」
しかしナギへの評価が落ちてしまったようである。
申し訳ないと、心の中で謝っておく。
「ま、そういうことならこのデンス先生が、シュー様のために人肌脱いで差し上げますわよ!」
そういうと、デンスは一枚の地図を出してぼくに講義を始めてくれたのだった。
「これがこのガルフロア大陸の全土ですわ! 今私達がいるのはここ、“剣と盾の国”ルクスパレスです」
デンスが指差したのは、大陸のほぼ半分を占める大きな国だった。
「ルクスパレス……ぼくらが行こうとしている王都が、そのまま国の名前でもあるんだね。剣と盾の国っていうのは?」
「ルクスパレスは、ガルフロア大陸三国の中でも有数の軍事国家ですの。あの黒の剣とかいう得体の知れない組織一つとっても、国家内で色んな軍略や策謀が渦巻いていることは明白でしょう?」
確かに、彼らの存在はどう見ても表立った組織ではなく、裏で危険な実験を行っているのだろう。
それは……リンの扱われ方を見てなんとなく想像はしていた。
「ルクスパレスの西部一帯にかかっているのが、先日のエルシール大森林ですわね」
「エルシール大森林は、南西の国にも繋がってるほど広かったんだね」
ぼくはその大きさを見て心底驚いた。
「そう。そしてその南西の国は、“蒸気と歯車の国”オルグランド。三国の中では、今一番の発展を見せている国ですわ。なんでも、機械関連の技術が大変な進歩をしているとか」
「へぇ、一度行ってみたいね」
そして、残ったのは北東の国である。
「そこは“魔導大国”エインヘル。何を隠そう、私の出身国ですの」
「ええ!? デンスはルクスパレスの出身じゃなかったんだ。……ああ、どうりで」
今から王都に喧嘩を売りに行くぼくらに着いて来てくれるのかな、と思ったけど、さすがに口には出さないでおく。
「いつかシュー様も来てみるといいですわよ! シュー様みたいなファミリアもあちこちにいる、とってもとっても楽しい国ですわ!」
ファ、ファミリア?
完全にデンスはぼくの正体を勘違いしているけど……その方が都合がよさそうなので、訂正はしないでおく。
「ありがとうデンス。また機会があったら、色んなことを教えてくれると助かるよ」
「もちろんですわ! それなら今度は、私の専門分野である魔法について教えてあげますわよ!」
ルンルンと嬉しそうなデンスを見て、こちらまで楽しくなってしまうのだった。




