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第1話 これが勇者ですか?―5

 村の外れに住み着いた山賊を退治する。

 ぼくらが受けた依頼はそういう内容のはずだった。


 だが結果としてナギの行った行為は、山賊を片っ端から半殺しにし、お宝を根こそぎぶんどるという、どっちが賊なのだかよく分からない有り様である。


 ちなみにどうやって山賊たちを倒したかと言えば、まずは一つ目の“ゆうしゃパワー”で山賊がアジトとして使っていた山小屋に火を放ち、二つ目の“ゆうしゃパワー”で山小屋の周りに“堀”を作った。


 火に驚いて外に出てきた下っ端たちは、次々とその堀の中に転落していったというわけである。


「これでゲームセット……か」


 山小屋が真っ黒に煤けて崩れていくのを目の当たりにしたナギは、三つ目の“ゆうしゃパワー”で自らが放った炎を消火する。


「火の後始末はちゃんとするんだ」


「当たり前だろ。オレは勇者だぜ? 火をほっといて山火事になっちまったら、たくさんの人に迷惑がかかるだろーがよ」


 そういうことをさらっと言うあたり、ナギの性根が善人なのか悪人なのか、いまいちまだ計りかねていた。

 そうして、かっぱらった財宝を背負ってナギが下山を始めようとした時である。


「お、おい、待ちな!!」


 てっきり、炎に巻かれて死んでしまったと思ったのだが。

 逃げ延びていたらしい山賊団のボスが、一人の少女を抱えて立っていた。


 少女の年齢は、本当に幼く、まだ十歳にも満たないように見える。

 大人用のジャケットを頭からすっぽりと被せられ、表情まではよく見えなかったが、可哀想なほどに脅えて全身で震えていた。


 それもそのはずで、少女の首筋には、刃渡り三十センチはあろう小太刀が突きつけられていたのだ。


「……なにそれ? 全然笑えないんだけど、何の真似?」


「るせェ!! お前は勇者なんだろ? 正義なんだろ!? だったら、こんな小さな女の子を見捨てられるわけないよなァ!? 本当は、俺たちの商品だったんだけどよォ!!」


 山賊団のボスは、小太刀を握っていない左手で、少女の首元を指差して見せた。

 そこには緑色の首輪が嵌められていて、いったいコイツらが、少女で何をしようとしていたのか――聞かなくてもすぐに想像が出来てしまった。


「いいか!! 最悪の結末を見たくねぇならよォ! いますぐ、金と剣をその場に捨てて土下座しな!!」


 ナギにとっても、この状況は予想していなかったに違いない。

 出来ていれば、一日に三回までしか使えない“ゆうしゃパワー”を、消火作業に使うはずがないのだから。


「あァん!? さっさと詫びを入れんかいッ!! 俺にゃあもう何も無いんだ、こんなガキ一人ブッ殺すくらいどうってことないんだぜッ!?」


「分かった。分かったから……そう何度も汚ぇ唾飛ばしてんじゃねーよ、クズ」


 ナギの目の色が変わっていた。

 今までの、非道な行いをしながらもどこから悪戯っ子のように飄々と目を輝かせていた、あの目から。


 一切の感情を無くし、ただ怜悧な光だけを灯している……氷の目へと。


 ナギは山賊団のボスに言われた通りに、金品を詰め込んだ風呂敷も、伝説の剣であるはずのティルヴィングも手の届かないところまで放り投げ、土下座をした。


「……これでいいのか?」


「んだよ、なかなか聞き分けのいいところもあんじゃねーか。そうだ、ガキはガキらしく大人の言うことを聞いてりゃよ――」


「これでいいのかって聞いてんだよッ!?」


 地面に向かって発せられるナギの殺気を帯びた叫び。

 土下座をしているのはナギの方だというのに、ビリビリとした凄味すら感じられる叫びだった。


「オレだったら……土下座させた相手の後頭部を踏み潰した上で、靴の泥が綺麗に無くなるまで舌で舐め取らせるけどな」


「…………は、はぁ!?」


 唐突に発せられたのは――提案だった。

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