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第5話 ぼくらの世界(後編)―10

「大丈夫、この大森林の仲間なのだから、大切にするさ。安心して預けてくれ」


「しかし、ここまで五人で来たから……寂しくなるのぅ。なかなか可愛らしい顔をした子だったからな。またこれからは、四人旅か」


 別れを惜しむランドの言葉だった。

 ……なんか今、聞き流しちゃいけないフレーズが聞こえた気がするけど。


「あの、四人旅って。やっぱりまだついて来る気なんですか?」


 いまいち反応が薄いナギに代わって、ぼくがその質問を投げかけておく。

 ランドは心外だといった表情をして、大きく頷いた。


「当たり前だろう。勇者様に仕えるのが俺の役目だからな」


「いや、役目って……。……あの、ランドさんって、人生の一発逆転のために勇者に仕えたいんでしたよね?」


 ぼくが聞くと、ランドは何をいまさら、と言わんばかりの純粋な瞳で頷いた。


「ぼくら思いっきり、王都の聖騎士軍に喧嘩売っちゃったし。正直に言えば、ランドさんの目的を考えるならぼくらについて来ない方がいいと思うんです。勇者っていうのだって……そのせいで、敵を増やしている面もありますし。だから――」


 ぼく自身、ランドのためを思っての言葉だったけど、その途中でむんずと大きな手が掴みかかってきた。

 濡れているのが嫌だったからとっさに避けたけど、その結果、ランドの手はナギの頭の上に乗っていた。


「バカ野郎。ガキのクセに、大人の心配をしてんじゃねーよ。その騎士軍が汚いやり口をしてるってのは、今この場で見たばかりじゃねぇか」


「おわっ!?」


 わしゃわしゃとナギの頭を撫でるランド。

 が、力が強すぎるのでナギの頭を湯の中に突っ込んでいるだけになっている。


「ぶぼぼぼばっ!? こ、殺す気かバカオヤジっ!!」


「お、やっと元気になってきたじゃねーか。そうだ、ガキっていうのは元気でなきゃいけねぇ」


 怒り心頭のナギと余裕綽々のランドの格闘が始まる。

 ヴーツェはそれを見て、腹を抱えて笑い転げるのだった。


 ……二人とも、素っ裸で暴れまわって何やってんだかって思うけど。

 だけど、こんな大人があの時、ぼくらの前にいてくれたのなら。


 ぼくらと……リンの運命は、こんなにも捻じ曲がっていなかったのかもしれない。

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