第5話 ぼくらの世界(後編)―6
「初めから何か変だと思ってたんです。なにか妙な違和感があるって……やっと分かりました」
天狗はぼくと対面すると、腕組みをして動こうとしなかった。
早く考えを言ってみろと、催促されているようだ。
「その天狗のお面……ぼくらの世界のものに近いんですよ。ぼくらから見れば、この異世界は典型的なファンタジーの世界感だ。それなのに、その天狗のお面は妙に浮いてるんです。それに加えて、さっきのナギが“ゆうしゃパワー”を使うことを見透かしていたような動き」
ほう、と天狗はお面の輪郭をそっと撫でる。
「あなたも、ぼくらと同じなんじゃないですか……? ぼくらの世界から、異世界に転移した――」
「だとしたら、なんだと言うのだ?」
突然、揺らぐ視界。
あれ?
どうしてだ?
どうして、ぼくは天狗に殴られ吹き飛ばされて――顔を殴られた痛みを感じているんだ?
「うあああああああああああああああっ!?」
「姿形で油断していたが、貴様もコイツと同じなら……倒すまでのことだ。否、むしろ感謝しようではないか。こうして、自らの出自について明かしてくれたのだからな」
ぐわっはっは、と天狗は実に愉快げな笑い声をあげた。
今までブタの姿になってから感じたことなど無かった痛みが、ジンジンとぼくの右頬を突き刺している。
……やはりコイツは、ぼくらと同じ世界の人間で。
その上、転移者狩りを目的としている……相当、危険なヤツに違いなかった。
いやむしろ、ぼくらの天敵と言ってもいいような存在だろう。
「だが、まずはこのガキからだ。コイツの力は、あまりに危険すぎるからな。……さぁ、起きろ」
天狗はうつ伏せに倒れていたナギの身を起こすと、大木を背もたれにして無理やり座らせた。
ナギは辛うじて意識が残っているのか、うぅ、と小さな呻き声をあげている。
「貴様の命……確かに貰い受けるぞ」
構えた天狗の右手から、黒い靄のようなものが溢れ出す。
嫌な予感がする――ぼくはすぐにナギの元に寄ろうとしたが、
「ぐあああああああああああああああああああああああああああっ!!」
次の瞬間には、天狗の手刀が、ナギの心臓へと突き刺さっていた――




