第4話 ぼくらの世界(前編)―1
鬱蒼と茂った森の中、木々をつたって高速で移動する人影が複数。
「ダメだよナギ、いくら走っても振り切れそうにないっ!」
「んなこと、一々言われなくても分かってるっつの!!」
そう叫んで返すナギだったが、であれば、この状況いったいどうやって切り抜けるつもりだろうか。
「がう、がう」
「ほら、そろそろガブの体力も限界に近付いてきて――」
なさそうだった。
ガブは息一つ切らさず、ナギのペースにぴったり合わせて走ってきている。
さすがは野生児といったところか、末恐ろしい少女である。
となると、このままではナギの体力が尽きる方が早いだろう。
「ねぇ、もう“ゆうしゃパワー”を使って解決した方が――」
「ダメだ! こうもバラけられたら、一網打尽にして撃退完了、なんてこと出来ねぇ。そうなったら、いくらでも仲間を呼ばれておしまいだっ」
ナギにはナギの考えがあるようで、頼みの“ゆうしゃパワー”も温存のようである。
そして、その時は唐突にやって来た。
「うわっ!?」
盛り上がった木の根につまづき、派手に転倒するナギ。
頭から一回転していったが、大丈夫だろうか。
「足を止めたぞ、今だやれぃ!!」
すると、待ってましたと言わんばかりの勢いで、木々の上から一斉に影が降りてきた。
ようやく姿を現した彼らの正体は――全身を覆うゴワゴワとした毛並み、巨大な手足には鋭い爪、開いた口には剥き出しの牙。
人狼。
人間を遥かに超えた身体能力を持つ、人型の獣である。
「やばいよ、ナギぃぃぃ!!」
「だから、んなこと言われなくても分かってるって」
でんぐり返しのまま動かないナギだったが、その股の間から覗いた顔は、不敵な笑みを湛えていた。
「言ったろ? バラけてちゃあ太刀打ちできねぇって。だが、これなら――」
ワーウルフ達の目標はナギ一人である。
なるほど、ナギは彼らが密集する、この時を狙っていたのか。
「ぶっ飛ばしてやるぜ、喰らえ、風の刃をッ!!」
ナギの右腕から、風の渦が迸り一気に放たれる――
その、直前での出来事だった。
「があああううううううううううううううううううううう!!」
両手を広げたガブが立ちはだかり、遠吠えに似た叫び声をあげたのは――




