第3話 伝説の剣と伝説の山賊―12
「なんでだ!? 俺の実力に不満があるのか!?」
「いや、そういうことじゃなくてさ、イメージの問題だよ、イメージの。……そうだな、そういうことなら、そのイメージを払拭できるなら仲間にしてやってもいいぞ」
ベッドをボスボス殴っていたランドは気付かなかったようだが、ぼくは見てしまっていた。
ナギの非常に悪い顔……何かを思いついた時の、悪魔のようなナギの表情である。
「ついていっていいのか!?」
「ああ。この町に伝説の剣ってあっただろ。あれが引っこ抜ければ、あんたにも勇者の一員のイメージがつくはずだ」
「な、なるほど確かに。早速チャレンジしてきてもいいか!?」
「もちろん。ただし、タイムリミットは明日の朝までだぜ。それ以上は待てないからな」
ナギの出した課題に対し、ランドはうおおおおおおと雄叫びをあげながら部屋を飛び出していった。
今の時刻は夕方の六時。
もしかしたら、成功にせよ失敗にせよ、途中で帰ってくる可能性もあるけど……。
「まあ、そんな心配すんなって」
くっくっく、とナギは楽しげな笑みを浮かべていた。
「宿に来る途中に見たけど、“勇者チャレンジ”は大人気御礼のため五時間待ちの長蛇の列が出来ていた」
「五時間!? どんな人気アトラクションだよそれ!?」
「そして、オレのやるべきことはあと一つ」
そう言って部屋から出て行くナギ。
五分くらいしてから、獣耳の少女を連れて戻ってきた。
「あ、彼女にはこっちの部屋に居てもらうってことだね?」
「いや。デンスにも勇者チャレンジに行ってもらった。もし成功して伝説の剣が抜けたら、売れば一気に億万長者になれるんじゃないかってな」
なるほど……貧乏騎士のデンスには、お金をチラつかせて動いてもらったというわけか。
「デンスにもタイムリミットは明日の朝って言ってあるよ。二人とも、今しかチャンスがないから絶対に列から離れないだろう。オレたちはそうだな、ゆっくり夕飯を食って、夜の九時くらいに出発すればいいだろ」
そう言って、ナギはベッドの上に仰向けになって寝そべった。
お、恐ろしい。
ナギはいとも簡単に、ぼくらだけで出発が出来る状況を作り上げてしまったということなのか。
「ん……がう……んがう……」
獣耳の少女が、ナギを指差してぼくに何かを伝えようとしていた。
何を言いたいのかは分からないけど、あまりのナギの非道っぷりを非難しているのかもしれない。
「とりあえず、ちょっと休んでから飯を食いに行こうぜ」
ナギは楽しげにふんふんと鼻歌を口ずさんでいる。
どうやらナギの目論見通りに、ぼくらの二人旅は無事再開されそうだった。




