第3話 伝説の剣と伝説の山賊―9
突如としてこの異世界に召喚され、しかも何故かブタになってしまったぼくにとっては、やはり旅の目的は元の世界に戻ることである。
しかし、その手がかりが何処にあるかなんてさっぱり分からなかったし、ナギに関しては異世界での生活を楽しんでいるようは節もある。
「えっと……その……」
「ま、言いたくねぇなら無理には聞かねぇけどよ。だいぶ先を急いでるみたいだったからな。俺のツテがあれば、良いルートを紹介してやれるかと思ってよ」
「い、いや、ひとまずは、この女の子を人狼の里に帰してあげようとしてるんです」
「それからは?」
急に鋭い目つきになって、ランドはぼくに聞いてきた。
ぼくが言い淀んでいると、パンっと手を打ってデンスが明るい声をあげる。
「そういうことなら、やはりこのまま王都に向かってはどうでしょう? 王都には大きな図書館があって、実は私も、情報収集のためにそこに向かう途中なのですよ!」
なるほど、それは良い情報を聞いたかもしれない。
王都に向かうというのは、進路からしてナギの選択肢の中にもあるのかもしれない。
だけどナギは具体的に目的地を言ったことがなかったし、急いでいる理由、というのも聞いたことがなかった。
「まあ、それは……ナギが起きたら話し合ってみるよ。なんだかんだ、二人には道中を助けてもらった……のかもしれないし」
「何故はっきりと言わないのです?」
「何か引っかかる言い方だよなぁ? あん?」
あれー、感謝の言葉を伝えたつもりが何故か不審がられてるぞ?
「えっと、とにかく……二人には、もう少し同行をお願いできると助かるかもしれない。ナギは絶対に言わないと思うけど、やっぱり、ぼくたちだけの旅って何かと分からないことも多いし……。その、ナギに代わって、ぼくからお願いしてもいいかな」
ナギが寝ている今のうちにと、ぼくは一気に思いの丈を述べた。
デンスとランドは、すぐに力強く頷いて応えてくれる。
「もちろんですわ。元より私の旅自体、家宝を取り戻すためのアテの無いものですもの。シュー様と一緒に旅が出来れば、私にとっても何よりですわ」
「まあ俺も男だ。そういう風に言われて断るわけにゃあ行かねぇな。……もっとも、坊主にはさっぱり信用されてねぇみてぇだがよ」
そう言って、ランドは優しくナギの頭を小突いた。
ナギは変わらず穏やかな寝息を立てたままである、相当疲れていたのだろう。
「あ、そうだ。ランドさんと、あとデンスにも……まだちゃんと言ってなかったけど、ぼくはシューで、こっちは本当はナギって名前なんだ」
「ええ知ってますわよ。何度もシュー様が呼んでいましたから」
「ええ!?」
急に冷ややかな態度で言われたので、びっくりして大声を出してしまった。
「ですが、ちゃんとナギに自己紹介されるまで、私はトゥルスティーンと呼んでやるつもりですの。うふふふ……」
「おっ、そりゃいいな、俺もずっと坊主って呼んでやろう。挨拶は人間関係の基本だからな!」
なんか妙なところで恨みを買っている気がするけど……。
勝手に話したことをナギに怒られても嫌なので、このことは黙っていることにしよう。




